『虎に翼』で描かれた多種多様な“カップルの形” 寅子と航一の恋模様の行方は?

 NHK連続テレビ小説『虎に翼』の第19週「悪女の賢者ぶり?」では、高瀬(望月歩)と小野(堺小春)の婚約が発表された。『虎に翼』ではこれまでの様々なカップルが登場してきたが、恋愛における価値観の変化をも描き出してきた。

 振り返ると『虎に翼』の第1週では、寅子がお見合いをしているシーンからスタートしていた。しかし、寅子は「なぜ自分が結婚しなければならないのか?」と納得いかず、何度もお見合いは破断してしまうというのが恒例だった。「女の人の一番の幸せは結婚」への反発から結婚することに対しては距離を置いていた寅子だったが、次第に結婚に対する捉え方が変化していく。『虎に翼』はリーガルドラマではあるが、登場人物の恋愛模様が丁寧に描かれているのも面白いポイントだ。

 第19週では職場では、高瀬と小野が寅子に「友情結婚」を報告してきた。高瀬と小野は放火事件の一件以降、次第に仲を深めていた。休み時間になると、高瀬が小野にロシア文学を勧めているシーンも描かれており、視聴者の間では「くっつくのでは?」という声も多かった。

 深田(遠山俊也)が「いつからお互いを意識し始めたのか?」と聞くと、高瀬は「意識していません」と一言。2人は困った顔で、友情結婚であることを告げる。世間体を気にして両親から見合いを勧められている小野と、結婚せずに半人前と見下されるのが嫌な高瀬。2人の結婚を自分の過去と重ね合わせた寅子は、祝福するのではなく「慎重に考えたほうがいい」と忠告するのだった。

 『虎に翼』ではこれまでも様々なカップルが登場してきた。まずは直道(上川周作)と花江(森田望智)。花江は女学校時代から女は早く見合い結婚をするのが親孝行であるという考えをもっていた。当時の恋愛はお見合いをするのがまだまだ一般的で、2人の出会いももちろんお見合いだ。とはいえ、花江が猪爪家に遊びに来た際に、一目ぼれをした直道が両親に頼んで実現したものだった(それも花江の策略だったわけだが)。それは早くから結婚を臨む花江にとっても望んでいたものであり、すんなりと結婚が決まる。2人の結婚の形は現在では一般的ではないが、当時からすると当たり前のように行われていた恋の形である。

 寅子の場合はまた事情が異なっていた。寅子は明律大学で出会った花岡(岩田剛典)と出会い、お互いに切磋琢磨しながら、関係を育んできた。その関係は傍から見たらカップルと言える関係性だったが、2人はお互いの思いを告げることなく、時間だけが過ぎていった。花岡と良い関係を築いていたと思った矢先、突然、花岡が婚約者を紹介。衝撃を受けた寅子は、弁護士としての仕事がうまくいかなかったこともあり、両親に向かって、社会的な地位を得るために結婚がしたいと申し出る。結婚=親孝行という主流の考え方ではなく、あくまでも弁護士として活躍していくための手段として結婚することを選んだのだ。そんな寅子の事情を聞いた優三(仲野太賀)は寅子にプロポーズし、晴れて婚約することになった。最初こそ、社会的地位を獲得するためという名目ではあったが、2人は心から惹かれ合い、愛を育んでいった。

 寅子の明律大学女子部時代の同級生である崔香淑こと汐見香子(ハ・ヨンス)は、複雑な事情を抱えている。高等試験には不合格となり、甘味処「竹もと」で働きながら合格を目指していた香淑だったが、日本国内で出版社に勤める兄の潤哲(ユン・ソンモ)が治安維持法違反の容疑で特高警察による取調べを受けたことにより、兄妹である香淑自身にも危害が及び帰国。朝鮮半島で汐見(平埜生成)と多岐川(滝藤賢一)と知り合い、日本に渡った後に汐見と結婚した。

関連記事