長瀬智也×二宮和也の名演を再び 『ハンドク!!!』に詰まっていた連続ドラマの面白さ

 さて、二宮演じるノブである。彼は医療パートとは別の、一番の日常パートに関わる存在だ。「4号線の鬼殺しのノブ」と呼ばれやんちゃしていた時代がある。髪は根本に少し黒の残った茶髪で、頬にはうっすら傷跡が残り、やんちゃ時代の痕跡を感じさせつつ、いまは新聞配達を粛々とやっている。

 一番の弟分ながら、素朴なまでに純朴な一番よりもノブのほうがしっかりしているというか、クールに世の中を俯瞰しているのだろうと感じさせるのは、二宮の持ち味であろう。

 2002年に出版された堤監督の書籍『堤っ』(角川書店、現KADOKAWA/企画編集取材は筆者)のなかの堤と植田の対談で、堤が二十代のときに経験した死にまつわる出来事がその後の人生観に影響を与えていると語られていて、その体験はなかなかヘヴィーなものであった。それゆえか、医療の現実や死の本質を目の当たりにした者だけがわかる諦念のようなものが『ハンドク!!!』のなかに流れている。堤は植田世界が濃厚に出ていると対談で語っているが、植田の本質に堤の本質が引っ張り出された形かもしれない。そして、二宮こそが重要なほのぐらい部分を担っているようにも思えるのだ。

 世の権威や資本家たちがのさばる世の中に背を向けている存在がノブだ。アッパー層に抗う彼はすこし危うい陰の気配がある。一番の場合は、とことん明るく純朴に、何があってもめげずに権威に対抗していく、その対比が鮮やかだ。

 ノブの行く末には想像を絶する展開が待っている。そしてノブの存在が、医師としての一番にひじょうに大きな影響を与えることになるのだ。え、うそ、そんな、という展開である。

 ノブの最大の見せ場は第7回。ノブのいた児童養護施設の友人・南野風(高橋一生)が脳の病気で目が見えなくなり、 SMHに入院する。風(藤井風よりも前に風という名前の人がいた)の入院にはある陰謀が関わっていて……。

 第7回を起点に最終回まで、これでもかと盛り上げていくのは、よき時代の連ドラである。それにしてもノブが一番に差し入れるとあるブツが、のちのち重要な役割を果たすとは誰が思ったことであろうか。

■配信情報
『ハンドク!!!』
TVer、U-NEXTにて配信中
出演:長瀬智也、内山理名、二宮和也、真中瞳、岡本麗、沢村一樹、野際陽子
脚本:大石静
演出:堤幸彦、金子文紀
音楽:zoë
オープニング:TOKIO「DR」
プロデューサー:植田博樹
©TBS

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