『GO HOME』“バディもの”としての異質さを読み解く 八津弘幸脚本の既視感のない面白さ

 警察ドラマに多い“バディもの”。その多くが第1話でバディを組むこととなり、基本的には全話をかけて関係性を深めていくストーリーになっている。各話ごとのエピソードとは別に、バディが成熟していく様子を描くことで、登場人物の変化を見せることができ、ドラマ性が高くなるためだろう。しかし、『GO HOME~警視庁身元不明人相談室~』(日本テレビ系)は、そんな“バディもの”のセオリーに反しているのが特徴的だ。

 本作は、警視庁に実在する部署「身元不明人相談室」をモデルに描いたドラマで、同期ながら10歳の年の差がある三田桜(小芝風花)と月本真(大島優子)のバディが活躍するストーリー。すでにバディを組んでいた2人は、第1話から仲の良さを感じさせる小気味良いやりとりを見せていた。変化を見せていくドラマで、出会いを見せずに最初から出来上がっているバディをメインに据えるのは、正直リスクが高い。バディが出来上がっていく過程のなかで、キャラクターの人間性を見せていくほうが、視聴者に理解してもらいやすく、キャラクターへの愛着も湧きやすいからだ。しかし、そこは流石の小芝と大島。キャラクターの人間性や関係性を想像させるセリフ回しや表情によって、ドラマ開始数分で思わず応援したくなるバディ像を作り上げていた。

 『GO HOME~警視庁身元不明人相談室~』は、犯人を明らかにする王道の警察ドラマや、死因を明らかにする法医学ドラマとも異なり、遺留品や聞き込みなどを元に亡くなった人がどんな人生を送り、最期に何があったのかを明らかにしていくドラマだ。また、遺族が大切な人の死をどう受け止めるかも丁寧に描かれている。“バディもの”の魅力である仲が深まっていく様子をあえて描かずに、一人ひとりの人生とそれを明らかにする様子に重点を置くことで、1話1話のエピソードの良さが際立っている。

 脚本を担当する八津弘幸は、『半沢直樹』(TBS系)や『下町ロケット』(TBS系)などエンターテインメント性の高いドラマを描く名手。重いテーマを扱いながら、一つひとつのエピソードに既視感のない面白さを感じられるのは、八津の腕によるものと言える。

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