『新宿野戦病院』ヨウコと享が医療格差に直面 宮藤官九郎が信じるあらゆる感情の持つ生命力

 シゲさんに馬乗りになって心臓マッサージを行い、自分が爆笑することでシゲさんに届けようとするヨウコ。処置室の他の医師たちが唖然とするなか、ヨウコと享の笑い声がけたたましく響き、そこに勇太(濱田岳)や舞(橋本愛)も加わる。そして健闘も虚しく死亡が確認された途端、ヨウコは間髪入れずに涙を流し、ひとしきり泣ききったらけろりとして颯爽とその場を後にする。よくよく考えてみればこの第5話は、はずき(平岩紙)のヨウコや院長(柄本明)に対する憎しみで幕を開け、マユ(伊藤蒼)の母親に対する怒りがあるなど、いたるところに“感情”が湧き続けている。喜怒哀楽、あらゆる感情の持つ生命力を、このドラマはとことん信じているということに違いない。

 ところで中盤に舞と勇太のやりとりでは、公園に設置されたいわゆる“いじわるベンチ”をめぐるやりとりが登場する。これはいままさに、新宿区内のトピックのひとつとして話題になっているタイムリーな題材だ。積極的に追い立てるのではなく、居場所を奪うという“拒絶”によって行われる消極的な排除。構造としては先述の医療や保険の制度をめぐる変革にも少々通じているものかもしれない。このドラマの主題に則っていえば、他の場所で拒絶されて排除されて歌舞伎町へと流れ着いた者たちは、そこでも排除されてしまった時に、いったいどこへ向かえばいいのだろうか。

■放送情報
『新宿野戦病院』
フジテレビ系にて、毎週水曜 22:00~22:54放送
出演:小池栄子、仲野太賀、橋本愛、平岩紙、岡部たかし、馬場徹(ドランクドラゴン)、塚地武雅、中井千聖、濱田岳、石川萌香、萩原護、余貴美子、高畑淳子、生瀬勝久、柄本明ほか
脚本:宮藤官九郎
プロデュース:野田悠介
演出:河毛俊作、澤田鎌作、清矢明子
制作:フジテレビ ドラマ・映画制作部
制作著作:フジテレビジョン
©︎フジテレビ
公式サイト:https://www.fujitv.co.jp/shinjuku-yasen/
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