『新宿野戦病院』ヨウコと享が医療格差に直面 宮藤官九郎が信じるあらゆる感情の持つ生命力

『新宿野戦病院』医療格差に直面

 夏になると聖まごころ病院のロビーに涼みに来るホームレスと、防衛副大臣を務める政治家。両者がどちらもECMOでの治療を必要とした状況になるが、使えるのは一台のみ。この時、それぞれが受ける“医療”に差が生まれることは、はたして避けられないことなのかどうか。7月31日に放送された『新宿野戦病院』(フジテレビ系)第5話では、歌舞伎町からはるばる勝どき(距離にしてざっと10kmぐらいか)まで移動したヨウコ(小池栄子)と享(仲野太賀)が、こうした“医療格差”という現実に直面する。

 ここで扱われたホームレスと政治家という天秤は、いささか極端すぎる例なのかもしれない。それでも今回のエピソード中では、いままさに進められているマイナンバーカードと健康保険証の一体化であったり、日本とアメリカの保険や救急医療の違いなどが取り上げられていき、取り残される=“排除”される人がまだかろうじて少ない現状に対しては肯定的な目が向けられている。もちろんもっと掘り下げていけば、現状にもいくつもの課題が存在しており、このままのうのうと続けていくことが難しくなりつつもあるのは抗えない事実であろう。

 しかしそうしたことを踏まえても踏まえなくても、医師は目の前の患者の状態を見極め、その都度救うために全力を注いでいく。それを円滑に行うために必要なものが制度であり、そこが崩壊すれば医療格差はより顕著なものになってしまう。要するに、“日本の皆保険制度はすばらしいよね”としているのではなく、“いま変えていくべきところはもっと他にあるだろう”ということであるわけだ。

 さて、今回のエピソードでは、結局ECMOでの治療を受けることができなかったホームレスの男性・シゲさん(新井康弘)が医療格差の犠牲となって命を落とすこととなる。彼の死は、このドラマで初めて描かれた患者の死ということになるはずだ。医療ドラマである以上はどうしたって避けられないこの出来事に対し、本作では医療ドラマではありえないほどの感情の爆発を伴ってその瞬間を迎えることになる。それは直前のシーンでヨウコが享に話していた、“絶対に助からない患者”に「笑う」ことで脳に錯覚を与え、持ち直すことをねらうという秘策の、かなり応用的なところであろう。

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