松岡茉優はローテンションな役ほどハマる! 『ギークス』西条ワールドの“心地よさ”
愛想がいいとは決して言えず、自分にとって不可侵なマイワールドがあるからこそ、相手の世界も大切にする。結果、他人とは距離をとり深入りしないかに見えるが、どこかその距離感が心地いい。
松岡茉優が演じるキャラクターに見られる傾向だ。主演を務める『ギークス~警察署の変人たち~』(フジテレビ系/以下、『ギークス』 )で松岡が演じている、記憶力と証拠分析能力に定評のある個性的な鑑識官・西条唯(松岡茉優)も例に漏れずそうだ。
人に深入りしすぎず、仕事については定時上がりにこだわり、私情を挟まず固定概念を持ち込まないからこそ、仕事の本筋・本質からズレてしまうことがないとも言える。
吉良ます美(田中みな実)、基山伊織(滝沢カレン)と女3人ギークでいても、彼女たちの場合群れているという感じが一切なく、個々に存在し合っている。相手の意見に聞く耳は持つものの、各々が好き勝手話しているあの空気感はなんだかんだ居心地が良さそうだ。
上っ面や馴れ合いを嫌い、「他人に変な思い入れを持たないのが一番」だとして下手に取り繕うことが苦手な西条と共通するのが、『最高の教師 1年後、私は生徒に■された』(日本テレビ系/以下、『最高の教師』)での高校教師・九条里奈だろう。担任をしていた生徒のうちの誰かに殺され、人生2周目を生きるという難しい役どころを熱演した。
元から生徒に向き合う熱血教師タイプではなかった九条が、タイムリープし生徒たちと本気で向き合いながら自身が人生1周目でやり残したことや自分の死の真相を探ろうとするという突飛な設定ながらも、どこまでもクールに淡々とブレない覚悟を持って挑む九条の姿はやはり西条とも近しいところがあるだろう。自分に向けられる殺意を含む理不尽にとことん対峙し切ろうとする肝の座りっぷりが光り痛快だ。松岡の噛み締めるように発する一言一言には、ローテンションながらも凄まじいエネルギーが宿る。
『初恋の悪魔』(日本テレビ系)では、もう1つの人格を持つ刑事・摘木星砂(松岡茉優)を好演。スカジャンを着て乱暴でぶっきらぼうな言葉遣いながらも人の奥を見る彼女と、何だか危うさもありながらもどこか控えめで儚げでもあるもう1人の彼女がいて、その両極端な人格を見事演じ分けていた。そして、それぞれが互いを想い合い守り合っている一番の理解者であるかのような不思議でかけがえのない関係性を見せてくれた。