二宮和也の“一人二役”だからこその仕掛け 『ブラックペアン2』に渡海が登場する可能性は?

 “オペ室の悪魔”と呼ばれた渡海征司郎と瓜二つの見た目を持ちながら、渡海とはまるで異なる性格のもうひとりの“悪魔”。世界で唯一ダイレクトアナストモーシスという術式を扱うことができる天才外科医であり、患者に手術を受ける代わりに全財産の半分を賭した二者択一のギャンブル“シャンス・サンプル”を持ちかける金の亡者。現在放送中のTBS日曜劇場『ブラックペアン シーズン2』で二宮和也が演じる、天城雪彦というキャラクターはそのような人物である。

渡海は日曜劇場に“メス”を入れたか? 『ブラックペアン』に見る新たなヒーロー像

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 2018年4月期に放送されたシーズン1において二宮は、先に述べた渡海という外科医を演じていた。この渡海という人物は、かつて父親が医療過誤――患者の体内にペアンを置き忘れるという――の嫌疑をかけられて東城大病院を追われ、その後に亡くなったことで、東城大と佐伯(内野聖陽)への復讐を誓う。医療過誤をもみ消す、つまり自身の腕で患者を救い、過誤を起こした医師に多額の金銭を要求するのだが、最終話でその金銭は医療過誤の被害者救済のための寄付に充てていたことが明らかにされた。

 また同時に、父親の医療過誤疑惑の真相も明らかにされ、結果的に渡海は手術の失敗の責任を取るかたちで東城大病院を去っていく。その後の行方は明らかにされないものの、どこかでまた外科医として、相変わらず医療過誤というもの自体を憎みながらその手腕をふるっていることが示唆されるところで幕を下ろしたのである。

 そして今回のシーズン2で、二宮は渡海から天城へとシフトする。それ以外のキャスト――渡海の指導を受けた世良(竹内涼真)や佐伯などは、シーズン1と役柄も演者もほとんど変わっていない。このように続編作品で、キャストは変わらないのに主人公のキャラクターだけががらりと別になるというのはそうあることではないが、その一見無理難題な事柄を解決させるのが、原作にはなかった渡海と天城が“瓜二つ”という設定だ。しかも第1話の段階で、その“瓜二つ”ということを殊更に強調させるのだから、多少無理やりに見えたとしてもずいぶんと潔い。

 そうすることでシーズン1によって根付いた『ブラックペアン』=二宮和也主演のドラマというイメージを維持することができるうえに、そもそも渡海が登場しない原作の続編作『ブレイズメス1990』『スリジエセンター1991』を映像化することが可能になる。しかもこの“瓜二つ”設定が、単なる設定として終わるのか、はたまたなんらかの意味を持つものとして物語に作用していくのかという脚色の選択肢が生み出されるのだ。シーズン1では渡海という“悪魔”の過去と、もう一つの善ともいえる顔が明らかになっていった。それにならえば、天城を単なるエキセントリックな外科医のまま終わらせないためのアクセントはどうしたって必要となる。

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