田中真弓が与える不思議な“安心感” 『虎に翼』で見せる“まんま”なおばあちゃん像

 NHK連続テレビ小説『虎に翼』で、寅子(伊藤沙莉)が娘の優未を連れて新潟に戻った後、“あの人”との再会シーンが大きな話題を呼んでいる。

 この“あの人”とは、田中真弓が演じる稲のこと。これまでのドラマで稲は、花江(森田望智)の実家である米谷家で働く女中として登場していた。花江と寅子を母のように見守り、温かく支える姿は、視聴者の印象に強く残っていたはず。

 公式サイトには、稲について「故郷の新潟に帰った後も、寅子との縁が続いていく」と記されていた。この一文が、ファンの間で大きな期待を呼び、ネット上では稲の再登場を予想する声が広がっていた。

 そして、その期待に応えるかのように、第81話で劇的な再会が実現する。毎週水曜日に新潟地裁本庁の案件も担当することになった寅子が、仕事を終えて帰宅すると、そこには思いがけない人物が待っていた。「寅子さん、お帰りなさい。ご無沙汰しております」という稲の言葉に、寅子は「どうして稲さんが?」と驚きを隠せない。この予想外の展開に、視聴者も寅子と同じ驚きを感じたことだろう。寅子は、本庁に出向く毎週水曜日と、仕事で家事に手が回らないときは、家の手伝いを稲にお願いすることに。

 稲に対する寅子の娘・優未(竹澤咲子)の素直な反応も微笑ましい。最初は不信感を抱いた優未と家に入りたい稲の攻防にはじまり、2人の相性もだいぶ良さそうに見える。どこか新潟の生活に今だ馴染みきれていない優未にとっては、数少ない「本音」を話せる人になる可能性も秘めているのではないか。

 稲といえば、ドラマ序盤に結婚観で悩む寅子に、「女は男みたいに好き勝手にゃいかないからね」「受け入れちゃいなさい、何も考えずに」と助言した存在でもある。今振り返ると、この言葉は本作の一つの柱として、寅子を含め彼女の学友たちが抱えていた問題にも繋がっている。

 『ONE PIECE』のルフィ、『ドラゴンボール』のクリリン、『とっても!ラッキーマン』のラッキーマン、映画『天空の城ラピュタ』のパズーなど、独特のハスキーボイスを活かした男性役で知られる田中。その深みのある声は、寅子よりも長い人生を生きてきた年上の女性という立場である稲のちょっとした言葉にも重みを持たせる。それぞれの環境が変わった今、どんな言葉が交わされるのか、視聴者の期待は高まるばかりだ。

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