『虎に翼』には“喫茶店”が3つも登場 朝ドラにおける“出会いと別れ”の重要な役割に

『カムカムエヴリバディ』(2021年度後期)

 物語において、喫茶店が特に重要な場所として描かれているのが『カムカムエヴリバディ』だろう。三世代のヒロインが、昭和から平成、そして令和までの100年のファミリーストーリーを紡いでいく『カムカム』。その初代ヒロイン・安子(上白石萌音)と稔(松村北斗)が初デートに訪れるのが、ジャズ喫茶「ディッパーマウスブルース」である。

 マスターの定一(世良公則)がかけるレコードが、ルイ・アームストロングの「オン・ザ・サニー・サイド・オブ・ザ・ストリート」で、「ひなたの道を」というタイトルはドラマ全体を貫く大切なメッセージとなっている。二代目ヒロイン・るい(深津絵里)、三代目ヒロイン・ひなた(川栄李奈)の名前はその象徴だ。後にひなたがパーソナリティを務めることとなるラジオ英会話番組「サニーサイドイングリッシュ」、さらにドラマの最終盤でるいがアニー・ヒラカワ(森山良子)こと安子と再会を果たすステージで歌っていたのが「オン・ザ・サニー・サイド・オブ・ザ・ストリート」である。

 戦争の影響から定一は「ディッパーマウスブルース」を閉めざるを得なくなるが、時代は移り、その息子・健一(世良公則)が再び岡山に「ディッパーマウスブルース」を開店。最終回では、店を引き継いだるいと錠一郎(オダギリジョー)の幸せな晩年の姿が映し出されていた。

『虎に翼』(2024年度前期)

 『虎に翼』ではそもそも寅子(伊藤沙莉)たちの憩いの場として甘味処「竹もと」が喫茶店に近いポジションとして存在しており、店名の元となっているよね(土居志央梨)が住み込みで働いていたカフェー「燈台」が先にあることも相まって、「ライトハウス」がここまで先述してきたような出会いと別れを担う場所にこれからなっていくのは新潟という立地もあり少々考えづらい。ただ、すでに寅子と涼子、玉の再会の場所になっており、日曜日に玉が生徒たちに英語の授業を開いている様子からは新潟の憩いの場として機能しているようにも思える。行きつけのお店となっている航一(岡田将生)にとっては少なくともお気に入りの場所だ。そして、これからの展開を考えると、寅子にとっても「ライトハウス」は航一から初めて食事に誘われたお店として思い出に刻まれていくのだろう。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『虎に翼』
総合:毎週月曜〜金曜8:00〜8:15、(再放送)毎週月曜〜金曜12:45〜13:00
BSプレミアム:毎週月曜〜金曜7:30〜7:45、(再放送)毎週土曜8:15〜9:30
BS4K:毎週月曜〜金曜7:30〜7:45、(再放送)毎週土曜10:15~11:30
出演:伊藤沙莉、岡田将生、土居志央梨、桜井ユキ、平岩紙、羽瀬川なぎ、片岡凜、遠山俊也、田中美央、望月歩、堺小春、岡部ひろき、筒井真理子
作:吉田恵里香
語り:尾野真千子
音楽:森優太
主題歌:米津玄師「さよーならまたいつか!」
法律考証:村上一博
制作統括:尾崎裕和
プロデューサー:石澤かおる
取材:清永聡
演出:梛川善郎、安藤大佑、橋本万葉ほか
写真提供=NHK

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