『光る君へ』高畑充希が“愛の人”として作り上げた定子 清少納言との絆は永遠に

高畑充希が『光る君へ』に刻んだ愛

 『光る君へ』(NHK総合)第28回「一帝二后」。年の暮れ、まひろ(吉高由里子)は道長(柄本佑)との子を出産し、宣孝(佐々木蔵之介)は子を賢子と名付けた。一方、道長は入内させた娘の彰子(見上愛)を中宮にし、天皇の后を定子(高畑充希)と彰子の2人にする「一帝二后」をもくろむ。その目的は国家安寧のためであるが、彰子が一条天皇の心を捉えられる気配はなく、一条天皇もまた定子を想うあまり、彰子を中宮にする決心がつかない。

 第28回では、心労が重なり倒れてしまった道長が、死の淵でまひろに呼び止められ、目を覚ました一方、一条天皇から深く寵愛を受けていた定子が息を引き取った。

 道長を演じている柄本が、自身の妻である明子(瀧内公美)と朋子(黒木華)の前で見せたなんともいえない佇まいが強く印象に残っている。道長が目を覚ました時、夜通し看病していたと思しき明子は、一睡もしていないようなやつれた顔で、道長の無事を泣いて喜んだ。だが、この時、道長は明子を抱き寄せはしたものの、映し出されたその手は明らかにまひろの手を思い出し、求めていた。土御門殿では、倫子が家族総出で道長を出迎えたが、道長の反応は薄い。その反応は純粋に病み上がりのようにも、自身が倒れてからどのくらい経ったのかが分からずに困惑しているようにも見える。しかし、まひろによってこの世に引き戻されたこともあり、目覚めてからずっとまひろを思っているようにも見えるのだ。

 道長が倒れた場面で、倫子が道長の手を握る明子の手を退けるなど、互いを意識する倫子と明子が静かに火花を散らす姿も描かれたが、道長が真に想いを寄せる相手は倫子でも明子でもないことを柄本の表情が物語る。白い光に包まれた世界で「まひろ」と呼ぶ道長の穏やかな声、安堵する明子に対し目をそらし、まひろのまぼろしを見たことに戸惑う様、倫子の前で見せたどことなくうつろな立ち姿。道長のまひろへの想いが、明子や倫子への対応から間接的に感じられるからこそ、今後、2人の妻との関係において雲行きが怪しくなるのではと不安も覚える。お互いに対する嫉妬心を覗かせていた倫子と明子。もし倫子と明子が、道長のまひろを想う強い気持ちを知ってしまったら、一体どうなるのだろうか。

 他方、定子は一条天皇との3人目の子を出産した後、静かに息を引き取った。入内したばかりの頃、定子はまだ兄・伊周(三浦翔平)をからかう無邪気な子どもだった。時が経つにつれ、その面持ちは次第に憂いに沈んでいく。一条天皇を深く愛するとともに、家族のことも大切に思っている定子は、伊周の失脚を機に板挟みとなり、じわじわと追い詰められていったのだ。高畑は、悲運に見舞われ、心に傷を負いながらも一途に一条天皇を愛する定子を演じ切った。出家した身でありながら皇子を産んだことなど、異例の中宮であり、宮中の人々からは多くの非難を浴びたに違いない。自らの立場を理解しながらも、一条天皇の寵愛を受け続ける姿に対して一条天皇の母・詮子(吉田羊)は苦言を呈していたし、色香を使ってうまく一条天皇を惹き付けているのではないかとも疑ってしまう。しかし、一条天皇とのシーンで見せる高畑のまなざしからは彼を虜にし意のままに操ろうなどといった意思は感じられない。定子はただ純粋に、一条天皇を愛しているだけなのだ。

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