エディ・マーフィの魅力健在! 『ビバリーヒルズ・コップ:アクセル・フォーリー』の痛快さ

 This is 安打。それも二塁打。『ビバリーヒルズ・コップ:アクセル・フォーリー』(2024年)は、そんな「普通に面白い」という概念を具現化したような作品だ。恐らく観た人の多くが「いや~普通に面白かったなぁ」という思いとともに、次の行動(ご飯を食べる、風呂に入る、寝るなど)に移るだろう。疲れた1日に、ホッとひと息つくのにバッチリな映画。ポッカコーヒーのような作品。それが本作である。

 こうしたイチローばりの職人芸を披露したのは、もちろん『ビバリーヒルズ・コップ』シリーズ(1984年~)の主演と言えばこの人、エディ・マーフィである。今のアラフォー以上にとって、エディの存在は大きい。特に皮肉と暴言とギャグを織り交ぜたマシンガントークは、今のアラフォー世代の“アメリカンジョーク観”を形作った……というのは言い過ぎかもしれないが、多くの人がエディの「話芸」には魅せられたものである(吹き替えの富山敬と山寺宏一の功績でもある)。

 そして『ビバリーヒルズ・コップ』のアクセル・フォーリー刑事と言えば、そんなエディの当たり役だ。素行は良くないが、タフでガッツがあって、義理人情に厚い。そして最大の武器はハッタリとユーモア。身一つならぬ、口先だけで巨大な事件や陰謀に立ち向かう。時には堂々と嘘をつきながら、ユーモラスに事件を解決していく(話芸で情報を聞き出していく感じは探偵っぽいので、個人的には『名探偵コナン』の青山剛昌の名探偵図鑑に載ってもいいと思う)。まさにコメディアンのエディにピッタリの役だ。そして今回もエディは絶好調である。なんならシリーズで『1』の次くらいに調子が良かったかもしれない。普通に還暦超え相応の体型になっていて、「現場で現役の刑事」には少し無理がある肉体にはなっていたが、それはそれとしてエディの魅力はしっかりとあった。

 お話は例によって例の如くである。デトロイトで刑事をやっているアクセル・フォーリー(エディ・マーフィ)は、ビバリーヒルズで疎遠になっている娘のジェーン(テイラー・ペイジ)が、危険な事件を追っていると知る。こうしちゃいられないとビバリーヒルズに飛んだアクセルは、例によって例の如く、口先一つで巨悪の陰謀に立ち向かうのであった。

 やっていることは、基本的にこれまでのシリーズと変わらない。アクションはやや現代風になっているが、やはり最大の見どころはエディの話芸である。前半でたまたま悪党たちが旧友の家を荒らしているのに出くわしたとき、すぐさま「悪党の仲間」になりきって、「お前ら仕事が遅いんだよ!」と悪党たちを上手いこと騙しながら、情報を聞き出し、さらにキーになる証拠をゲットするところなど、「これぞ! アクセル・フォーリー!」という感じがした。

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