『虎に翼』家庭を蔑ろにする寅子に集まる冷ややかな目 仕事=男性という偏見への皮肉に

『虎に翼』仕事“だけ”に打ち込む寅子

 良くも悪くも注目を浴び、法曹界において針の筵のような状態に陥っている寅子。加えて、忙しさから家事や育児が花江(森田望智)に任せきりになっており、家庭での立場も危ぶまれている。娘の優未(金井晶)は小学校に進学したが、まだまだ母親に甘えたい盛り。だが、親子の時間が取れるのは朝だけで、寅子は優未が寝た頃に帰宅する。優未は寅子の仕事を理解しているのか、面と向かって駄々をこねたりはしないが、やはり寂しそうだ。そんな中で家族に相談もなく、桂場からの依頼を受けた寅子。みんなにそのことを報告した時、誰も怒りはしなかったが、全員から「またか……」という雰囲気がひしひしと感じられた。優未に関してはもはや寂しさを通り越して、寅子に期待すらしていない節さえ感じる。

 だが、もし寅子が男性なら、観る側もあまりモヤモヤした感情を抱かないのではないだろうか。家庭を顧みず仕事だけに打ち込むという行為は変わらないのに、行為者が男性か女性かで見方が変わってしまう。本作は家庭のことがおろそかになっている寅子の姿をあえて強調することで、こうした無意識の偏見をあぶり出し、問題提起をしようとしているのではないだろうか。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『虎に翼』
総合:毎週月曜〜金曜8:00〜8:15、(再放送)毎週月曜〜金曜12:45〜13:00
BSプレミアム:毎週月曜〜金曜7:30〜7:45、(再放送)毎週土曜8:15〜9:30
BS4K:毎週月曜〜金曜7:30〜7:45、(再放送)毎週土曜10:15~11:30
出演:伊藤沙莉、石田ゆり子、岡部たかし、仲野太賀、森田望智、上川周作、土居志央梨、桜井ユキ、平岩紙、ハ・ヨンス、岩田剛典、戸塚純貴、松山ケンイチ、小林薫
作:吉田恵里香
語り:尾野真千子
音楽:森優太
主題歌:米津玄師「さよーならまたいつか!」
法律考証:村上一博
制作統括:尾崎裕和
プロデューサー:石澤かおる
取材:清永聡
演出:梛川善郎、安藤大佑、橋本万葉ほか
写真提供=NHK

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