『光る君へ』で描かれた『枕草子』誕生の瞬間に涙 “書く”ことによって救われた2つの心

『光る君へ』で描かれた『枕草子』誕生の瞬間

 ききょうを演じるファーストサマーウイカの演技も胸を打つ。ファーストサマーウイカはききょうにとって定子は「推し」であると語っている。まひろとの場面で、定子との思い出話を語る時はなんとも嬉しそうな顔をし、定子の近況を打ち明けた時は心の底から心配していることが伝わってくる。ききょうの「推し」への思いは、たとえ嫌がらせを受けようとも一切ブレない。何があっても定子を慕い続けるのがききょうの魅力だ。そんなききょうは、気兼ねなく話せる相手であるまひろからのアドバイスを受け、たった1人の悲しき中宮のために『枕草子』を書き始める。書き上げたものを定子の枕元に運ぶききょうの佇まいは控えめだが、その凛とした瞳には生きる気力を失った定子が少しずつ元気になっていきますようにと願うききょうの強い思いが感じられる。

 ききょうの思いは定子に届いた。はじめはききょうの行動に気づきながらも、憂いに満ちた面持ちで瞼をそっと閉じていたが、次の場面でききょうの気配を感じ取る定子の顔つきは、どことなくききょうの書き上げたものを楽しみに待っているように見えた。「秋は夕暮れ」を感じ入るように読む定子の横顔はまだどこか悄然としているが、少しずつ生きる気力を取り戻していることがわかる。

 『枕草子』を読む定子の姿を目の当たりにしたききょうの感極まる背中には、ききょうの喜びがありありと感じられた。たった1人のために書き始められた『枕草子』についての一連の場面は、観ていて思わず涙がこみ上げる。高畑はインタビューにて「唯一見えた一筋の助ける手というか、光がききょうだったのかなと思って」と述べた。一心に定子と向き合い続けるききょうの存在が、定子の光となった。高畑が、姫と従者という関係から「人対人みたいなところになっていってるのかなと思いました」と語ったように、2人のつながりがぐっと深まる回となった。

■放送情報
『光る君へ』
NHK総合にて、毎週日曜20:00〜放送/ 翌週土曜13:05〜再放送
NHK BS・BSP4Kにて、毎週日曜18:00〜放送
NHK BSP4Kにて、毎週日曜12:15〜放送
出演:吉高由里子、柄本佑、黒木華、井浦新、高杉真宙、吉田羊、高畑充希、町田啓太、玉置玲央、板谷由夏、ファーストサマーウイカ、高杉真宙、秋山竜次、三浦翔平、渡辺大知、本郷奏多、ユースケ・サンタマリア、佐々木蔵之介、岸谷五朗、段田安則
作:大石静
音楽:冬野ユミ
語り:伊東敏恵アナウンサー
制作統括:内田ゆき、松園武大
プロデューサー:大越大士、高橋優香子
広報プロデューサー:川口俊介
演出:中島由貴、佐々木善春、中泉慧、黛りんたろうほか
写真提供=NHK

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