『東京タワー』透と耕二の“破滅へのカウントダウン” 無防備で憎めない松田元太の演技

 さて、本格的に自滅が近づいているのが耕二だ。彼女の由利(なえなの)そっちのけで喜美子(MEGUMI)からの着信を取ったものの、これが結果的に2人の女性に不信感を与えることになる。由利は彼が浮気をしていることを確信し、喜美子も今まであえて踏み込んで聞いてはいなかった耕二の彼女の存在を電話越しに感じる。

 ただ違和感を感じながらも何とかやり過ごそうとする由利と耕二のやり取りよりも、互いに夫や彼女という存在がいながらも、会うなり抱擁し合い、会えないことへの不満をぶつけ合う喜美子と耕二の方がよほど恋人同士のような会話らしくも聞こえる。この2人の関係性はどこか“共依存”の色合いも含むが、何なら喜美子には夫とこんなに言い争った経験がそもそもないのではないだろうか。

 耕二役を熱演する松田元太は『ゼイチョー〜「払えない」にはワケがある〜』(日本テレビ系)では明るく真っ直ぐな後輩役を好演し、優しすぎる性格ゆえに税金の徴収が苦手な徴税吏員役を務めていた。真っ直ぐなところは本作での耕二にも通ずるところがあるが、耕二はもっと自分の欲望に忠実で軽率なところも多々あるものの、狡猾なところはなく無防備でなんだか憎めない。荒削りで自分本位だが、意外に人のこともよく見ていて、そんな耕二だからこそ日頃抑圧されている喜美子も本音をぶつけたり甘えたりしやすいのだろう。くだらない自分も安心して見せられる気楽さが耕二にはある。

 しかしそんな迂闊な2人の情事がついに家族にバレてしまう“終わりの始まり”が描かれた。耕二にとっても一体何が自分にとっての“幸せ”なのか、目をそらさず見つめ直さなければならない時が迫っている。

■放送情報
オシドラサタデー『東京タワー』
テレビ朝日系にて、毎週土曜23:00~23:30放送
出演:永瀬廉、板谷由夏、松田元太(Travis Japan)、MEGUMI
原作:江國香織『東京タワー』(マガジンハウス刊、新潮文庫刊)
脚本:大北はるか
音楽:近谷直之
監督:久万真路ほか
ゼネラルプロデューサー:中川慎子(テレビ朝日)
プロデューサー:残間理央(テレビ朝日)、島本講太(ストームレーベルズ)、岡美鶴(アズバーズ)
制作協力:アズバーズ
制作著作:テレビ朝日、ストームレーベルズ
©︎テレビ朝日
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