某大統領「日本は外国人嫌いだ」に正しく反論するために 『人間の境界』で知る難民の真実

 そしてほぼ全編モノクロで撮られた映像が素晴らしい。近年では配信プラットフォームの影響か、ドキュメンタリー作品ですら高精細なルックが求められる傾向にあると感じるが、本作もどのシーンを切り取っても美しすぎる仕上がりだ。冒頭、広がる森林を俯瞰で映すショットから始まるが、濱口竜介監督『悪は存在しない』の森林を映すファーストショットとも似ている。

 また、モノクロが使用されていることにより、映像からはリアルタイム性が失われたように最初は思える。だが、コロナ禍であることを踏まえた描写がされることで、これは現実だと引き戻されるのである。これはわずか2年前、2021年が舞台なのだ。構成、物語、映像のどれもがハイレベルであり、ドキュメンタリー性が強い作品として名作だと言える。そして公式サイトを見れば、ポーランド政府は本作の上映を本気で妨害していたと書かれている。そのことを考え、調べていくと、難民に対する“国際的な”不都合の数々が見えてくるだろう。

■公開情報
『人間の境界』
TOHOシネマズ シャンテほかにて公開中
監督:アグニエシュカ・ホランド
出演:ジャラル・アルタウィル、マヤ・オスタシェフスカ
配給:トランスフォーマー
2023年/ポーランド、フランス、チェコ、ベルギー/ポーランド語、アラビア語、英語、フランス語/152分/G/ビスタ/カラー・モノクロ/5.1ch/原題:Zielona Granica/英題:Green Border/日本語字幕:額賀深雪
©2023 Metro Lato Sp. z o.o., Blick Productions SAS, Marlene Film Production s.r.o., Beluga Tree SA, Canal+ Polska S.A., dFlights Sp. z o.o., Česká televize, Mazovia Institute of Culture
公式サイト:https://transformer.co.jp/m/ningennokyoukai/  
公式X(旧Twitter):@ningen_kyoukai

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