堀田真由が担う“柱”としての役割 『アンチヒーロー』の好演で次のフェーズへ

 放送中の日曜劇場『アンチヒーロー』(TBS系)が好調である。

 観る者の善悪の概念に揺さぶりをかけるテーマ設定、作劇、そしてそれらを支える俳優陣ーーこのすべてが高い次元で結びつき、質の高いエンターテインメント作品として成立しているからだろう。主演の長谷川博己を筆頭に、力のある俳優が並んでいるが、その中でもとくに目を引く人物がいる。メインキャストのひとり、そう、堀田真由だ。

 「殺人犯へ、あなたを無罪にして差し上げます。」がキャッチコピーとなっている本作が描くのは、弁護士である主人公・明墨正樹(長谷川博己)が暗躍するさま。依頼人が犯罪者である証拠が100パーセント揃っていたとしても、彼はさまざまな手を尽くして無罪を勝ち取る弁護士だ。まさに“アンチヒーロー”。そんな明墨の率いる明墨法律事務所に所属しているのが、堀田が演じる若手弁護士の紫ノ宮飛鳥である。

 
 ドラマは赤峰柊斗(北村匠海)が明墨法律事務所の新たな仲間としてやってくるところからはじまった。だから私たち視聴者は彼に寄り添った視点を通して、明墨がどのような弁護士であるのかを知り、明墨法律事務所の“勝ち方”を知っていくことになる。紫ノ宮もまた、赤峰の視点を介して描出される存在。ポーカーフェイスな彼女はいつだってクールで、弁護士仲間でありながら心の内がまったく読めない。が、それは最初のうちのこと。物語が進み、視点が赤峰に寄り添ったものから少しずつ離れていくと、個々のキャラクターのパーソナルな表情というものが見えてくるようになってきた。

 ときに紫ノ宮は明墨のやり方に動揺しているのが分かる。そこにはもうクールなポーカーフェイスの持ち主はおらず、善と悪のはざまで揺れながら、「弁護士とは何か?」という問いの答えを追い求めるひとりの女性の姿があるだけ。堀田はこのあたりの演じ分けが軽やかで巧い。赤峰視点では紫ノ宮のある一面だけを提示し、視点がよりマクロなものになると、彼女は私たちにまた別の一面を提示する。

 
 こういった差異の提示は演技者ならば難しいものではないだろう。むしろ、これくらいできなければ役者業など成立しない。重要なのは、それぞれの“一面”が同じ人物のものであることを示せるかどうか。堀田はセリフの調子を大きく変えたり、大仰な表情を作ったりすることなく、紫ノ宮というキャラクターを多面的に立ち上げている。

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