北村匠海が“ベストなバランス”で成立させる『アンチヒーロー』 赤峰は視聴者の“目”となる

視聴者は赤峰(北村匠海)と共に明墨(長谷川博己)を“見る”

 北村が演じる、外から事務所に入ってきた赤峰は、観る者を『アンチヒーロー』の世界へと共に歩むように引き入れていく。第2話の終盤、赤峰は無罪を言い渡された緋山が、決定的な証拠である、血のついた作業服をゴミ処理場に捨てる現場を目撃する。そのときの、感情をどこに向けたらいいのか分からなくなってしまったような赤峰の瞳が印象的だった。事務所に帰った赤峰は、「先生はすべて知っていたんですね。先生の正義がどこにあるのか、僕にはわかりません!」と明墨を糾弾するが、明墨は「君が君の正義を貫くように、私は私の道を突き進む」と突き返す。

 向かい合う赤峰と明墨。明墨に憧れて事務所の門を叩いた赤峰だからこそ、明墨の強いボールを正面から受けようと立つ。まっすぐさと、それゆえにあやうさも含んだゆらぎを感じさせる赤峰を、ベストなバランスで成立させる北村が素晴らしい。

 「町工場、社長殺人事件」はひとまず終わりのようだが、明墨を今の正義(道)に進ませた理由であろう獄中の男(緒形直人)や紗耶(近藤華)の存在。第2話ラスト、明墨が花を手向けていた墓に刻まれた「REIKO MOMOSE」とは誰なのか。また木村佳乃、野村萬斎らが演じる検察庁側の動き、明墨との関係も気になる。そして赤峰自身の抱えている物語も進みそうだ。彼が持っているノートには、過去に赤峰が担当した暴力事件について書かれている。赤峰は自らが証明できなかったえん罪を晴らしたいと、明墨法律事務所のドアを叩いたのだろう。いくつものエピソードが同時進行で進んでいきそうな『アンチヒーロー』。

 そのなかでゆらぎながらも芯を失わない、北村演じる赤峰は大きな存在になるはずだ。赤峰には第1話で尾形の「近視眼鏡を取りに戻ったという供述の不自然さ」、第2話では「遺伝子検査を助手もなしに誰にも気づかれず再検査できるのか」と、重要なポイントに気づく視点があり、これも彼が事務所に加わった大きな力になりえる。

 そしてまっすぐなだけでなく、きちんとゆらぐ深い瞳を持った北村の赤峰がいることで、より明墨から投げられる「考えろ」というボールを、私たちも受ける覚悟を持てる。また、赤峰と共に明墨を“見る”ことで、その輪郭が浮き上がり、明墨の道が見えてくるだろう。

■放送情報
日曜劇場『アンチヒーロー』
TBS系にて、毎週日曜21:00〜21:54放送
出演:長谷川博己、北村匠海、堀田真由、大島優子、木村佳乃、野村萬斎
プロデューサー:飯田和孝、大形美佑葵
演出:田中健太、宮崎陽平、嶋田広野
脚本:山本奈奈、李正美、宮本勇人、福田哲平
©TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/antihero_tbs/
公式X(旧Twitter):@antihero_tbs
公式Instagram:@antihero_tbs
公式TikTok:@antihero_tbs

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