『95』『滅相も無い』『街並み照らすヤツら』 映画&演劇人が手がける4月期ドラマに注目

 『滅相も無い』(MBS/TBS)では、第67回岸田國士戯曲賞を受賞し、舞台作家として注目を浴びつつ、ドラマや映画でも活躍する加藤拓也が監督・脚本を担当している。 

 加藤拓也作品は、フィクション性がありつつも、日常の延長線上にあるようなリアリズムのある会話、演出、そして繊細なテーマを扱っているのが特徴的だ。舞台『綿子はもつれる』では「死」、舞台『ドードーが落下する』では「統合失調症」、映画『わたし達はおとな』では「学生妊娠」というテーマを中心に、物語が展開していた。本作でも、SF風の世界設定で、登場人物たちの人生が1話ごとに語られており、それぞれが抱いていた素朴な思いや悩みが徐々に浮き彫りにされていくのが面白い。

『滅相も無い』©︎「滅相も無い」製作委員会・MBS

 また本作では、登場人物たちが語るそれぞれの人生の再現として、“演劇的手法”が使われているのも加藤監督ならではの見どころだろう。同じスタジオセット内で、数人のスタジオキャストが複数の役を演じている。これによって、人生を語る登場人物以外のキャラクターや時間経過が抽象的になり、他者から見る他人の人生というものを可視化させている。これらは、舞台表現と映像表現の両方に触れてきた加藤だからこそなせる業といえる。

『滅相も無い』©︎「滅相も無い」製作委員会・MBS

 4月27日より放送がスタートする、監督に前田弘二、脚本に高田亮らを迎えた『街並み照らすヤツら』(日本テレビ系)も忘れてはならない。

 前田と高田といえば、何度も映画でタッグを組んできている名コンビ。2011年の『婚前特急』で初タッグを組み、劇場公開映画の商業デビューした2人は、2021年の『まともじゃないのは君も一緒』や、2023年には『こいびとのみつけかた』が公開されるなど、数々のタッグ作で長年精力的に活動している。『まともじゃないのは君も一緒』『こいびとのみつけかた』は、「おかしな2人の物語」と掲げている通り、変わり者の男女をコミカルに描いた物語となっている。

 これらの作品には、ストーカー行為や殺人衝動など、“愛ゆえに行き過ぎた行動をする人々”が描かれているという共通点も。最新作『街並み照らすヤツら』も、シャッター商店街にある経営ギリギリのケーキ屋の店主が、大切な店と家族のために、悪事に染めてしまう……という2人らしい物語になっている。

 近年、ネットの視聴環境が普及したことに加え、配信サービスオリジナルのリッチな映像コンテンツが増えたこともあり、“テレビ離れ”、ひいては“地上波ドラマ離れ”が加速しているとも言える。そんな中で、今回挙げたような映画や演劇のフィールドで活躍する製作陣が映像表現にバリエーションを与えることは、地上波ドラマに新たな可能性をもたらすのかもしれない。

■放送情報
ドラマイズム『滅相も無い』
MBS/TBSにて放送中
MBS:毎週火曜24:59~放送
TBS:毎週火曜25:28~放送
出演:中川大志、染谷将太、上白石萌歌、森田想、古舘寛治、平原テツ、中嶋朋子、窪田正孝、堤真一
ナレーション:津田健次郎
監督・脚本:加藤拓也
主題歌:クリープハイプ「喉仏」(UNIVERSAL SIGMA)
企画・プロデュース:上浦侑奈(MBS)
プロデューサー:戸倉亮爾(AX-ON)、林田むつみ(MEW)
制作プロダクション:AX-ON
協力プロダクション:ウインズモーメント
製作:「滅相も無い」製作委員会・MBS
©︎「滅相も無い」製作委員会・MBS
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