『9ボーダー』川口春奈らの姿に“幸せ”とは何かを考えさせられる 歌う松下洸平はハマり役に

 一方、六月は夫との別居生活を解消したいと思いながらも、なかなか行動に移せずにいた。そんな折、海外を飛び回るカメラマンの旦那から「別れたい」と離婚届を突きつけられてしまう。傷心中の六月を笑顔にしたのは、彼女が勤める会計事務所にやってきた新人公認会計士・松嶋(井之脇海)だった。

 そして、物語の鍵を握るのが、七苗が出会う、バルに住み込みで働いているコウタロウ(松下洸平)だ。登場から柔らかい声で歌う弾き語りはまさにCMのような爽やかさで、日常パートのシーンも松下の持ち前の自然体な演技が光る。シンガーソングライターと俳優、2つの顔を持つ松下ならではのハマり役に思わず歓喜したファンも多いのではないか。

 記憶喪失を抱えているコウタロウを最初は不思議に思う七苗だったが、次第に心惹かれていく。「まさか彼に、あんな秘密があったなんて」と驚く七苗のモノローグの真相も気になるところだ。

 第1話の終盤では「29にして完全迷子ですよ!」と七苗が嘆く様子が描かれていた。令和のこの時代、“ホワハラ”なるもので西尾からコンプライアンス違反だと通告された彼女だが、七苗は特段問題児には見えなかった。一生懸命に働き、真面目に生きてきたはずなのに、彼女が「幸せになれない」のはなぜなのだろう。そのヒントは、コウタロウが教えてくれた「受け入れる」姿勢にあったのかもしれない。

 八海の言う通り、人生はあらゆる“するしない”に溢れた迷路のようだ。キラキラした周囲と比較して、自分だけが取り残されているように感じることで、悩みを抱えてしまう。だからこそ、周りと比較をせず、今あるものをフラットに“受け入れる”。目の前にある小さな幸せに目を向けられるか否かが、幸福な人生を歩めるかどうかの分かれ道なのだろう。しかしそれは、簡単なように見えて意外と難しいことでもある。

 お金や地位、恋愛や結婚。私たちが、わかりやすく追い求めているものは本当に「幸せ」なのだろうか。人生の岐路に立つ3人の姉妹が紡ぐ物語は、きっと多くの視聴者の心に響くはずだ。このドラマが最終回を迎える頃、自分が何を「幸せ」だと感じるようになっているのかが楽しみで仕方ない。

■放送情報
金曜ドラマ『9ボーダー』
TBS系にて、毎週金曜22:00〜22:54放送
出演:川口春奈、木南晴夏、畑芽育、井之脇海、木戸大聖、山中聡、伊藤俊介(オズワルド)、内田慈、岩谷健司、箭内夢菜、奥村佳恵、矢崎広、兵頭功海、YOU、松下洸平
第2話ゲスト:緒方恵美
脚本:金子ありさ
プロデュース:新井順子
協力プロデュース:阿部愛沙美
演出:ふくだももこ、坂上卓哉
製作:TBSスパークル、TBS
©︎TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/9border_tbs/
公式X(旧Twitter):@9border_tbs
公式Instagram:9border_tbs
公式TikTok:@9border_tbs

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