バカリズム×オークラが語る、脚本、芝居、笑いについて 「ずっととんがり続けている」

バカリズムとオークラ、初対面の印象は?

(左から)バカリズム、オークラ

ーーバカリズムさんの役者としての魅力はどんなところに感じますか?

オークラ:人を観察する目があるので、じつは、いろんな人を演じられるんですけど、気持ちが繋がっていないとやりにくいんだろうなって思うんですよね。それがハマるとどんな種類の人間でもできるなと思うので、今回はそういったことを意識しながら書いています。突然どこかの段階で急に上手になったイメージがあるんですよ。昔は怒るなら怒る、悲しむなら悲しむとか、ルールを作ってコントをしていたのが、あるときから、微妙な感情を表現するようになって、“バカリズムってこんなに芝居がうまいんだ。役者業もできるんだろうな”と思ったことがあります。それから、ネタの幅も広がったイメージがありますね。

ーー芝居を意識するようになったきっかけがあるんですか?

バカリズム:僕は日本映画学校の俳優科出身(現:日本映画大学)なんですけど、お芝居の発表会では、いわゆる演劇的な大きめの演技を“強いられる”んですよ(笑)。今思えば基本的なことを教わっていたんですけど、当時はそこに反発している部分があって。“芝居はあくまでも記号的にしよう”としていたし、それよりもネタの発想を強調させる演じ方にしようと心がけていました。20代前半で、若干行き詰まりを感じたときに、“いろいろなキャラクターを演じれば、ネタが広がる”と気づいて、感情も入れるようになりました。

バカリズム

ーーお互いの初対面の印象は覚えていらっしゃいますか?

オークラ:芸人のときは、“このラインは誰も気づいていないだろう”と思ってネタを作っていたんですよ。当時は、今と違ってYouTubeもなければ、ビデオもないし、ネタ番組もほぼなかった時代。その数少ない資料で、自分なりのお笑いを作らなきゃいけない中、映画学校に在学中のバカリズムのネタを見て、“もうこのラインを知っているんだ!”と衝撃を受けました。僕から話しかけた記憶があります。

バカリズム:オークラさんからグイグイ喋りかけてきて、根掘り葉掘り聞かれた記憶がありますね。当時、同級生や周りの人でそこまでの話をする人もいなかったんで、自分と同じ感覚を持っている人がいるんだ、と思ったのは、よく覚えています。割とすぐ仲良くなって、家に泊まりに行ったり、一緒に銭湯に行ったりしたんですよ。

当時、オークラさんはお笑いの資料をいっぱい持っていて「ここは、こういうシステムで……」と、オークラさんの解説付きでいろいろ教えてもらったんですけど、僕はテレビで放送されているコント番組しか観てこなかったから、“こういうパターンがあるんだ”って思いましたね。

オークラ:“知らないでよくこのラインにたどり着いたな”って驚いた記憶があります。

バカリズム:あと、オークラさんの印象としては、実名を出して「ああいうネタはダメだ」とか「あの人たちのこと、本当は面白いと思ってないでしょ?」とか、結構人のことを言うなと思いましたね(笑)。

オークラ:バカリズムは、自分の仲間だと思ったんですよ(笑)。

バカリズム:でも確かに自分たちを肯定するためには、それ以外のものを否定することが一番分かりやすいんですよ。というのも、自分たちがやろうとしていることが、それまでのお笑いのかたちと真逆のものだったりするので、通じ合うためには、そのときに流行っているものを否定するのが分かりやすいんですよね。それから、バナナマンのお2人を紹介していただいたり、オークラさんと僕とで、設楽(統)さんの家に泊まって朝まで喋ったり、本当に分かりやすい“10代の青春”みたいな感じでしたね。

ーー長い付き合いの中で、お互い変わらないと思う部分は?

オークラ:バカリズムは変わってはいるんですけど、大まかな概要は変わっていないんですよ。笑いに関して、ずっととんがり続けているから、こんなにとんがり続けられる人って他にはいないだろうなと思います。そのあたりは、あのころと何も変わってないんですよね。

バカリズム:オークラさんは、ずっとカルチャーに詳しいし、常に敏感。いわゆる「若者のトレンド」ではなくて、その時代のセンスのいいものを教えてもらうことが多いです。コントに取り入れることもあります。テレビ東京でやっていた『ウレロ☆』シリーズのときも、僕が知らないミュージシャンや俳優さんをどんどん取り入れて、後に「あの人『ウレロ☆』に出ていたよね」ということも結構あったんですよ。お笑いをやるだけじゃなくて、いろんな文化を集めて、ひとつの新しいものを生もうとする。そこに対する嗅覚や感性はすごいと思います。

■放送情報
『イップス』
フジテレビ系にて、毎週金曜21:00~21:58放送
出演:篠原涼子、バカリズム、渡辺大知、味方良介、足立英、勝村政信、角田晃広、矢本悠馬、染谷将太ほか
脚本:オークラ、森ハヤシ、中園勇也
演出:筧昌也、並木道子、相沢秀幸
プロデュース:宮﨑暖
プロデューサー:熊谷理恵
制作著作:フジテレビ
©︎フジテレビ
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