『たとえあなたを忘れても』は“忘れたくない”物語 堀田真由&萩原利久の演技が胸を打つ

 ドラマ『たとえあなたを忘れても』(ABCテレビ・テレビ朝日系)のBlu-ray&DVD-BOXが4月5日に発売された。本作はそのタイトルが示すように、「記憶」をテーマに描かれた、儚くも美しいラブストーリーだ。

 このドラマは神戸の街を舞台に、ピアニストになる夢を失った河野美璃(堀田真由)と、記憶を失った青木空(萩原利久)の2人が紡ぐ物語である。空は記憶障害を抱えており、時に幸せだった記憶さえも失ってしまう。だが、そんな空にどんなに傷つけられたとしても美璃は決して見捨てることはない。何度も絶望に打ちのめされながらも、彼女はまっすぐに空に寄り添い続ける。

 廃墟に佇む誰にも弾かれないピアノ、叶わなかった夢、そして思い出せない過去……。そうした「役に立たないもの」たちが物語を彩る中で、2人の恋は儚くも美しい旋律を奏でていく。記憶を失うことで、空は何を得て、何を失うのか。そして、そんな空を美璃はどう受け止めるのか。そこには、私たち誰もが抱える、過去の記憶との葛藤が映し出されているのかもしれない。

 毎話良い意味で“裏切られる”物語の展開はもちろん、本作の大きな見どころとなっているのは、萩原利久演じる空の、“記憶を失った”ときの繊細な演技だろう。記憶を失った空は、まるで新生児のような無垢さを滲ませながら、時に虚ろな眼差しで美璃を見つめる残酷さを見せる。そんな空を、美璃はただひたむきに愛し続ける。それは、けっして楽な道のりとは言えないものであるが、それでも2人はお互いを信じ、支え合いながら前に進んでいく。そんな堀田真由演じる美璃のひたむきさにも、胸を打つものがあった。

 本作をリアルタイムで観ていた視聴者の中には、記憶を失うことについてドラマを通じて深く考えた方も多かったのではないか。もし自分が空のように、過去を忘れてしまうとしたら、どうするだろうか。忘れたい記憶と一緒に、大切な思い出まで失ってしまうかもしれない。だが、そんな記憶のない人生もまた、壮絶な人生を歩んできた誰かにとっては“幸福”という考え方もある。本作は、そんな難しい問いに真正面から向き合っている。

 記憶を失った空と、それでも空を愛し続ける美璃。時に切なくも美しく描かれる2人の物語は、思わぬ方向へと進んでいく。最終回に2人を待ち受ける衝撃のラストに、誰もが息を呑むだろう。美璃と空の歩みを、画面を止めながら“伏線”と一緒に辿っていくと新しい発見があるかもしれない。

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