『リビングの松永さん』は“温かい気持ち”になれるドラマに 成功に導いた中島健人の熱演

 最終回の展開も原作とは異なるドラマオリジナルの着地にチューニングされているが、原作者自身が“温かい気持ち”になれるようなドラマだったことは、この作品の成功を物語っていると言えるのではないか。

 もちろん、優れた脚本や演出など、さまざまな要素が重なって成功に繋がったことは言うまでもない。しかし、その中でも特筆すべきは、松永を演じた中島健人の熱演である。「高校生と恋に落ちるカタブツ男子」という複雑な役柄を演じるに当たって、中島健人は『ラーゲリより愛を込めて』や『おまえの罪を自白しろ』で培った演技力を存分に発揮した。

 30分という短い時間の中で『リビングの松永さん』は、ほぼ美己の心情を追い続けているドラマであると言っても過言ではない。だからこそ、美己の心の中の変化はダイレクトなモノローグで伝わるのだが、それを受けた松永の心情は中島健人のフィジカルの演技からしか受け取れないのである。しかも松永は不器用な男。それでもわかりすぎるくらいに、松永の心情は視聴者に毎話伝わってきたはずだ。

 思い悩んだような眉を寄せる表情、大切なことほど少しだけためらうかのような口ぶり、安心した時の力が抜けた笑顔……。これらは全て、視聴者が感じ取っていた"松永らしさ"を体現するものだった。3月31日をもってSexy Zoneを卒業する中島健人の俳優としての歩みからも目が離せない。

 あとにも先にも、こうした“原作もの”のドラマは多数存在する。ファンにとってはキャストの新しい一面が見られるような、原作者や原作ファンにとってはその世界観をリアルに再現するような作品が、今後も生み出されていくことを期待したい。

 『リビングの松永さん』は、そうした成功例の一つとして、重要な位置を占めることになるだろう。この作品の成功、そして美己と松永の新しい門出を、あのリビングで共に祝いたいものだ。

■配信情報
火ドラ★イレブン『リビングの松永さん』
TVer、FODにて配信中
出演:中島健人、髙橋ひかる、向井康二、藤原大祐、大久保桜子、黒川智花ほか
原作:岩下慶子『リビングの松永さん』(講談社『KCデザート』刊)
脚本:田辺茂範
演出:金井純一、日暮謙、松川嵩史
プロデューサー:萩原崇、島本講太、本郷達也、村山太郎
音楽:眞鍋昭大、畑添美菜
主題歌:Sexy Zone「puzzle」(Over The Top)
制作協力:MMJ
制作:カンテレ、Storm Labels
©︎カンテレ
公式サイト:https://www.ktv.jp/matsunagasan/
公式X(旧Twitter):@matsunagasan8
公式Instagram:@matsunagasan8

関連記事