『不適切にもほどがある!』市郎が反論できない姿を描いた意義 的確で重い“世間”のリアル
本作の見せ場となっているミュージカルパートだが、第5話以降、見せ方が変わりつつある。意見をぶつけ合うミュージカル対決的な描き方が弱まる一方、前半では描かれなかった昭和パートにミュージカルシーンが登場する機会が増え、心情を吐露する内省的なものが増えている。
それが決定的になったのが第8話で、令和にうまく溶け込んでいるように見えた市郎の孤立がじわじわと深まっているように感じた。
その後、栗田の結婚記念日に開かれたホームパーティに呼ばれた市郎と倉持は、栗田が過去に犯した不倫について今も友人から責め続けられており、倉持と同じ立場だったことを知ることになる。妻の親友という立場から栗田のことを今も責め続ける彼女たちの姿を見た小川は「気持ち悪りぃ」と呟いた後、「これが世間か」と実感する。
結局、倉持は妻の料理番組に出演することで仕事に復帰するのだが、批判が消えることはなく、一度の失敗を許さない世間の批判に対して、市郎ですら反論できなかったという苦い結末だけが残された。
最後に小泉今日子と彦摩呂がサプライズゲストとして登場する場面が楽しいため、後味自体は悪くないのだが、劇中で提示された結論は一番的確で重いものである。
しかし、だからこそコメディを通して問題と正面から向き合う作り手の誠実さが伝わってくる第8話であった。
■放送情報
金曜ドラマ『不適切にもほどがある!』
TBS系にて、毎週金曜22:00〜22:54放送
出演:阿部サダヲ、仲里依紗、磯村勇斗、河合優実、坂元愛登、三宅弘城、袴田吉彦、中島歩、山本耕史、古田新太、吉田羊
脚本:宮藤官九郎
プロデュース:磯山晶、勝野逸未
演出:金子文紀ほか
主題歌:Creepy Nuts「二度寝」(Sony Music Labels)
編成:河本恭平、松本友香
製作:TBSスパークル、TBS
©︎TBS
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