映画人に愛される水澤紳吾が『ブギウギ』に 小田島は戦後の日本を象徴する存在に?

 有楽町界隈を取り仕切るおミネ(田中麗奈)との出会いがスズ子のパフォーマンスに影響したように、この小田島との出会いもそうなるのではないかという気がするが、どうだろうか。時代は1955年。戦争が終わって10年が経った頃で、人々の生活水準の格差は非常に大きい。おミネたちがあの当時の一部の女性らを象徴していたように、小田島もまた戦後の日本のある側面を象徴する存在になるのだろう。あの時代を描くうえで、非常に重要なキャラクターだといえるはずである。

 そんな小田島を演じる水澤といえば、テレビドラマでの活躍もさることながら、多くの映画人に愛される俳優だ。出演作数はかなりのもので、挑むジャンルも役のタイプも千差万別。一般的には“グリコ・森永事件”をモチーフにした『罪の声』(2020年)で“キツネ目の男”を怪演した俳優として広く知られているのではないだろうか。彼がスクリーンに姿を現した瞬間、誰もがゾッとさせられたものである。水澤は手数の多い芝居をせずとも、佇まいだけでキャラクターを表現してみせる俳優だ。だが朝ドラは映画と比較すると、より分かりやすい演技が求められる。全身を扱った演技が見られることだろう。

 第13弾の新キャスト発表時に制作統括の福岡利武は「水澤さんは、本当に難しい役どころです。悪いことをしても、どこか悪人でない、そんな微妙な芝居を絶妙に演じてくれています」と水澤の演技について語っている。本当に難しい役どころである。先述したように小田島が背負うものは大きいし、スズ子たちとの関わり合いをどう表現するのかによって、これからしばらくの『ブギウギ』の印象は変わってくる。その声からも極悪人でないことが伝わってきたように、水澤は視線や仕草といった細部に小田島のキャラクターを乗せてくるはず。そしてここでの水澤のパフォーマンスは、また別のドラマ作品へとつながっていくはずである。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『ブギウギ』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
出演:趣里、水上恒司、草彅剛、蒼井優、菊地凛子、生瀬勝久、小雪、水川あさみ、柳葉敏郎ほか
語り:高瀬耕造(NHK大阪放送局アナウンサー) 
脚本:足立紳、櫻井剛
制作統括:福岡利武、櫻井壮一
プロデューサー:橋爪國臣
演出:福井充広、鈴木航、二見大輔、泉並敬眞、盆子原誠ほか
音楽:服部隆之
主題歌:中納良恵 さかいゆう 趣里 「ハッピー☆ブギ」
写真提供=NHK
公式サイト:https://nhk.jp/boogie

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