『【推しの子】』『このすば』『ゆるキャン△』 高橋李依が“推される”理由
嘘と本音の演じ分け
高橋が演じたキャラのなかでも最近特に話題を呼んだ『【推しの子】』の絶対的アイドル・星野アイ。OP曲「アイドル」でも歌われているアイの絶妙な腹黒さを、高橋は見事に表していた。
そもそも『【推しの子】』のTVアニメでアイが登場するのはほぼ第1話のみ。しかしアイは本作において終始重要なカギを握る人物であり、高橋には短い時間のなかで視聴者にアイの存在を印象付ける役割が任されていた。
自分を淡々と嘘つき呼ばわりする普段の声と、死に際で2人の子どもに対して放った「愛してる」の澄んだ声。高橋が示した声の違いは、嘘で自分を固めたアイの"本心の愛"をはっきりと伝える見事すぎる仕掛けだった。
なお、アイの演じ分けは冒頭で言及した「アイドル」のカバーver.でも見られる。わずか3分34秒の曲のなかにアイの被った仮面の多くが表現されているのは、まさに高橋の技量によるものだろう。
いかにもアイドルらしいあざとい抑揚がついている導入のラップと1番に対し、2番からは様子がやや変化。
2番のラップで吐き捨てる口調と息が交わり、ぶっきらぼうな3番のラップであざとさが消え、少し泣きが入った最後の「愛してる」は子を持つ母としてのアイの声で歌われる。
アイドルとして、嘘つきとして、母としてのアイの顔が表現された「アイドル」は、聴いても聴いてもアイの心が見えずまた聴きたくなる不思議な魅力を備えた曲だった。
恥を捨てた演技も嘘を捨てない演技も務め、おそらくは驚くほど多くの顔を持つがゆえに“推される”存在となった高橋李依。
彼女が演じるキャラクターが作品をどのように彩るのか、2024年の春アニメが楽しみでしょうがない。