趣里に宿った笠置シヅ子の熱狂と歌声 『ブギウギ』全楽曲を振り返る
そして、“ブギの女王”としてスズ子が一世を風靡したのがこの「東京ブギウギ」である。現在でも同曲は多くの歌手やミュージシャンがカバーしており、「リズムウキウキ」「心ズキズキ ワクワク」のリズムはきっと誰もが耳にしたことがあるだろう。作中でも戦後の暗い日常が幾度も描かれてきたが、国民はいつも笑顔で「東京ブギウギ」を口ずさんでいた。スズ子のパワフルな歌声と陽気なリズムは多くの人の生きる希望となっていたのだ。“ブギの女王”福来スズ子が誕生した記念すべき楽曲である。
そこからスズ子が次のステージのために善一に頼んで作られたのが「ジャングル・ブギー」。ちなみに実際の楽曲の作詞は黒澤明監督が手がけている。同曲は善一がスズ子から聞いたパンパンガールのおミネ(田中麗奈)たちの話を参考に、女性の強さを表現した。女豹のような衣装に、ギラギラと力強い眼差しで歌うスズ子と男性コーラスの掛け合いもお見事だ。
「東京ブギウギ」、「ジャングル・ブギー」、「ヘイヘイブギー」とブギが続く中で、スズ子はブギの女王として国民的スターに上り詰めていた。だが、これまで作曲を手掛けていた善一は映画の主題歌となった「青い山脈」の大ヒットにより人気作曲家となっており、さらにはブギがネタ切れ状態に陥っていた。そんなある時、スズ子が買い物のリストを口ずさむと、そこに着想を得た善一が新たに書き下ろしたのが「買物ブギ」。同曲は松浦亜弥や桑田佳祐、なにわ男子など現在でも多くのアーティストにカバーされていることから、耳馴染みのある方も多いのではないだろうか。曲名にもある買物の要素も加えつつ、「立て板に水」と言われるよどみのない語り口を善一はブギとしてアレンジした。
これらの楽曲は劇中で描かれているような経緯と近い形で制作されていたという。ブギが世間に求められる中で次々と斬新なアイデアを取り入れていた服部良一の手腕と、それに応えていた笠置シヅ子の力量には改めて驚かされる。
スズ子が“スウィングの女王”として知られるようになってからこれまでをざっと振り返ってきたが、こう見ていくとスズ子は時代に常に応え続ける一方で、音楽を誰よりも楽しんできたことがわかる。
■放送情報
NHK連続テレビ小説『ブギウギ』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
出演:趣里、水上恒司、草彅剛、蒼井優、菊地凛子、生瀬勝久、小雪、水川あさみ、柳葉敏郎ほか
語り:高瀬耕造(NHK大阪放送局アナウンサー)
脚本:足立紳、櫻井剛
制作統括:福岡利武、櫻井壮一
プロデューサー:橋爪國臣
演出:福井充広、鈴木航、二見大輔、泉並敬眞、盆子原誠ほか
音楽:服部隆之
主題歌:中納良恵 さかいゆう 趣里 「ハッピー☆ブギ」
写真提供=NHK
公式サイト:https://nhk.jp/boogie