『鬼滅の刃』遊郭編の鬼・妓夫太郎が貫いた“守るべきもの” 堕姫との兄妹の絆を振り返る
さらに堕姫と妓夫太郎の魅力といえば、やはり“兄妹としての絆”を語らないわけにはいかないだろう。彼らの絆は作中でもトップクラスに強固であり、その理由は人間だった頃のエピソードに関わっている。
2人が生まれたのは遊郭の最下層「羅生門河岸」で、極度の貧困に苛まれながらもお互いに支え合って生きていた過去をもつ。そこで妓夫太郎は醜い容姿、声などが理由で周囲から怪物のように忌み嫌われていた。それに対して人間時代の堕姫、“梅”は容姿に恵まれており、妓夫太郎にとって心の支えになっていたが、遊郭で客の侍に楯突いたことから、生きたまま焼かれるという仕打ちを受けてしまう。
その後鬼となった2人は、自分たちから何かを奪おうとする者を許さず、逆に他人から“取り立てる”側の強者として生きることを決意するのだった。
なお、妓夫太郎が堕姫を大切に想っているのと同じように、堕姫もまた妓夫太郎のことを強く慕っており、何度生まれ変わっても妹になると断言するほど。「遊郭編」の終盤、彼女が胸に秘めていた想いを爆発させる場面は、観る者の心を否応なしに揺さぶってくる名シーンだ。
とはいえ妓夫太郎は、堕姫を自分と同じような生き方に導いたことを後悔していた。彼女にはもっと幸せな人生があり得たのではないかと考え、自分から突き放そうとするのだ。たしかに妓夫太郎が教えた“奪われる前に相手から奪う”という生き様は、ある意味堕姫が不幸になった原因でもあった。
だが堕姫は妓夫太郎と離れることを決して選ばない。たとえ今より幸せに生きる道があったとしても、その決意は変わらなかっただろう。そして最終的に2人は、共に地獄に落ちるという運命を選ぶ……。
禰豆子と炭治郎は過酷な運命のなかで、ギリギリ最後の一線を踏みとどまることができたが、堕姫と妓夫太郎はその一線を踏み越えていった。不幸に生まれ、不幸に生きるしかなかった“もう1つの兄妹”の話を、「遊郭決戦編」であらためて噛みしめてほしい。
■放送情報
土曜プレミアム『特別編集版「鬼滅の刃」遊郭決戦編』
フジテレビ系にて、2月24日(土)21:00~23:40放送
原作:吾峠呼世晴(集英社ジャンプ コミックス刊)
監督:外崎春雄
キャラクターデザイン・総作画監督:松島晃
脚本制作:ufotable
サブキャラクターデザイン:佐藤美幸、梶山庸子、菊池美花
プロップデザイン:小山将治
美術監督:衛藤功二
撮影監督:寺尾優一
3D監督:西脇一樹
色彩設計:大前祐子
編集:神野学
音楽:梶浦由記、椎名豪
アニメーション制作:ufotable
キャスト:花江夏樹、鬼頭明里、下野紘、松岡禎丞、小西克幸、石上静香、東山奈央、種﨑敦美、沢城みゆき、逢坂良太
©吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable
公式サイト:https://kimetsu.com/anime/hashirageikohen/