『君が心をくれたから』象徴的な“雨”の演出 脚本家・宇山佳佑の小説と繋がる世界観

 本作は脚本を担当している宇山佳佑のオリジナルストーリーであるが、宇山が2018年に集英社から刊行した『この恋は世界でいちばん美しい雨』という小説と同じ世界観で描かれているという。この作品には雨がきっかけで恋に落ちた駆け出しの建築家・誠と、カフェで働く日菜が登場する。2人はある雨の日、一緒に乗っていたバイクで事故に遭い、瀕死の重傷を負ってしまう。しかし目を覚ました彼らの前に、現れた“案内人”と名乗る喪服姿の男女によって2人合わせて20年の余命を授かり、生き返ることに。しかしそれは、互いの命を奪い合うということも意味していた。表紙には赤い傘が描かれており、「雨」、“案内人”など、本作に共通するものもいくつか見られる。宇山も自身のXで、第6話の中でドラマと小説に共通する大切な設定要素が出てくることを明かしている。

 小説ファンには嬉しく、ドラマを楽しんでいる視聴者にはさらにドラマを深く楽しめる、この仕掛けは嬉しい。

 小説と本作に出てくる“案内人”が同一人物かはわからないが、彼らの仕事は奇跡を与えることだから、これまで雨以外の人たちに出会っていてもおかしくはない。それに、“案内人”は奇跡を与え、それを見届けはするがその人が死ぬところには直面しない可能性もある。そう考えると本作で日下が死ぬことについて「詳しくない」と言っていたのも納得できるところがある。

 本稿では「雨」に注目してきたが、“案内人”のように小説とドラマに共通しているものは特にキーアイテムとして大きな役割を果たすのだろう。そのような象徴的な“何か”に注目して見るのも本作の楽しみ方のひとつかもしれない。

■放送情報
『君が心をくれたから』
フジテレビ系にて、毎週月曜21:00~21:54放送
出演:永野芽郁、山田裕貴、斎藤工、松本若菜、白洲迅、出口夏希、真飛聖、遠藤憲一、余貴美子
脚本:宇山佳佑
主題歌:宇多田ヒカル
演出:松山博昭
プロデュース:草ヶ谷大輔
©︎フジテレビ
公式サイト:https://www.fujitv.co.jp/kimikoko/
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