『ブギウギ』愛助との別れを経て スズ子が向かう本当の“ズキズキ”と“ワクワク”

 ついに愛助(水上恒司)がこの世を去ってしまった。NHK連続テレビ小説『ブギウギ』第18週は、どんどん衰弱していく愛助と彼の帰りを待つスズ子(趣里)の想いが交差して描かれて辛かった。そして結果として愛助の訃報を聞かされたスズ子の口から「死にたい」という言葉が出たことも悲しい。赤ちゃんを無事に迎えられた幸せそうな雰囲気から一転して生への気力を失った彼女を見事に演じ分けた、趣里の演技力もここで発揮されている。スズ子はその若さにして、愛する人を見送りすぎた。

 箱根で旅行をしたのが最後。それからスズ子は東京で愛助から届く手紙を楽しみに、毎日を送っていた。時々、彼の衣類の匂いを嗅いで愛助の存在を確かめる。そしてその寂しさをエネルギーに変えて、身重な状態にも関わらず舞台「ジャズカルメン」を成功させた。スズ子は本当に、努力の人だ。思い返せば物語の初めから、踊りも容姿にも自信を持ってなかった。

 女性らしい愛嬌もリリー白川(清水くるみ)には敵わないし、踊りに関しても後輩の秋山美月(伊原六花)には歯が立たなかった。それでも憧れの大和礼子(蒼井優)のようになりたくて、毎日のようにスタジオに残って自主練をしていた。彼女の人一倍努力する人柄は、歌手・福来スズ子として成功を収めた後でも変わることはない。

 年頃だから意識した「恋」を勘違いした時期もあった。しかし、愛助への想いは松永大星(新納慎也)に告白をした時に感じた「恋」とは訳が違う。最初は受け身だったものの、愛助の熱烈な気持ちにスズ子の気持ちも芽生えていった。彼が年下であることを意識はしたものの、それを変に利用したりせず、むしろ尊敬の念を抱いて恋仲になった。愛助も、彼女を公私共に支えて2人は仲睦まじいカップルとして戦禍も乗り越えている。しかし、残念ながら夫婦になることが叶わないまま愛助は帰らぬ人になってしまった。

 スズ子にとって試練の続いた第18週は『ブギウギ』の大転換となるだろう。物語も後半に差し掛かってきた中で、ついに第19週のタイトルは「東京ブギウギ」となる。スズ子のモデルとなった笠置シヅ子にとって最大のヒット曲誕生の瞬間がやってくる。振り返ること第1話のアバンで、愛子をりつ子(菊地凛子)に託して舞台に上がるスズ子の姿が描かれていたが、おそらく第19週でその場面に合流するのだろう。

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