『ブギウギ』水上恒司が全身全霊で駆け抜けた一生 愛助は文字通り“愛の人”だった

 『ブギウギ』(NHK総合)第85話を観た誰もが壮絶な病魔との闘いに息を吞み、悲劇的な結末に天を仰いだことだろう。

 病床の愛助(水上恒司)は生気がない。病院食に手をつけず、うつろな表情で窓の外を見つめる。死期が近いことを悟り、トミ(小雪)に「お母ちゃんの子でほんま良かったわ」と感謝を伝えた。スズ子(趣里)と結婚する意志は最後まで固かった。「あの人は僕の人生を明るうしてくれた唯一の女の人や」と伝えると、トミも折れて「病気治したら、なんでも言うこと聞いたるわ」と愛助を励ました。

「絶対治して結婚するで」

 けれどもその願いはかなわなかった。大阪にいる矢崎(三浦誠己)からの電話で愛助の危篤を知った坂口(黒田有)と山下(近藤芳正)は、スズ子に知らせるべきか迷った末、家までやってくる。その頃スズ子の陣痛が始まっており、身重のスズ子を連れて産院へ向かった。

 愛助は最後の力を振り絞ってスズ子に手紙を書く。執念で机に向かい、一文字一文字魂を込めた。東京にいるスズ子と生まれてくる赤ん坊へ。初めての出産をスズ子は父親がいない中でやり通した。我が子を見つめる表情は母親のものだった。

 坂口はスズ子が無事に出産したことを伝えようとして、矢崎から愛助が亡くなったと知らされる。第1子誕生と入れ違いで届いた訃報に愕然とする坂口。愛助が助かるかもしれないというかすかな希望は打ち砕かれた。

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