近藤芳正、黒田有、三浦誠己　『ブギウギ』三者三様の“マネジメント”を比較する

　『ブギウギ』（NHK総合）第17週では、トミ（小雪）が、スズ子（趣里）が歌手をやめることを条件に愛助（水上恒司）との結婚を認めた。最愛の人との結婚か自分の夢か、という究極の二択の板挟みになるスズ子と愛助を、三者三様に見守り続ける家族のような存在がいる。村山興業東京支社長・坂口（黒田有）の言葉を借りれば「村山は家族のよう」で、「皆ボンを次期社長にするために頑張っている」村山興業のマネージャー陣だ。

愛助にとっては父親代わりの山下（近藤芳正）

　スズ子が歌手をやめるのか、愛助が村山興業を去るのかのどん詰まり状況に「社長が……村山が変わったらええ」と新たな解決策を提示するのが、村山興業の元やり手社員で愛助にとっては父親代わりのような存在、そして今はスズ子のマネージャーでもある山下（近藤芳正）だ。

　山下は一歩引いたところから俯瞰でよく全体を見渡せており、マネージャーにとっておそらく最も大切な能力ーー相手のことを本人以上に“信じ抜ける力”を持っている。芝居未経験のスズ子に喜劇王として活躍する“タナケン”こと棚橋健二（生瀬勝久）からの共演依頼が舞い込んだ際にも、そのオファーを受けるように促し、背中を押したのは他でもない山下だった。初めての演技経験に自信を喪失しかけているスズ子に、彼女の魅力は歌はもちろんのこと“彼女自身の面白さ”だと熱弁し、それは表現方法やジャンルに囚われない強みであることを真正面から伝えていた。元社員ということで現在は最もトミと適正な距離が取れており、フラットな意見をぶつけられる唯一にしてかなり貴重な人物ということになるかもしれない。

人が好きで忠誠心の強い坂口（黒田有）

　一方、村山興業のたたき上げで、実力のみで東京支社長まで出世した坂口は、一見したところ強面で厳しい人物かと思いきや、人情深さが随所に垣間見える。村山興業のために、そしてずっとお世話をしてきた愛助のために、責任感強く彼を見守ってきた自負ものぞかせる坂口だからこそ、彼に立派な後継者になってほしい思いと、同じだけ彼の幸せを願う親心のような気持ちが湧いてくるのを、自ら折り合いをつけながら対峙しているのだろう。

　スズ子との交際を認めたのも、彼女の人間味や真摯さ、どんなことも笑い飛ばしてしまえるタフさに愛助を託してもいいと思ったからだろう。加えてスズ子の前では特に自然体で伸び伸びといられる愛助の姿に安心したのではないだろうか。またそんな場所を愛助が自力で育み得られたことに、彼の成長を実感したのかもしれない。

　人が好きで忠誠心の強い坂口ゆえ、スズ子の予期せぬ妊娠というトミがまた心中穏やかにはいられぬ事態に、また山下同様両サイドの気持ちがわかってしまうがために、さらなる板挟みになってしまうのだろう。