『院内警察』榊原の毒に対抗する一筋の希望 玄理が仕事に真っ直ぐで信念のある役を好演

 『院内警察』(フジテレビ系)第2話では、若き天才外科医・榊原俊介(瀬戸康史)の毒が病院中に浸透していく中、一筋の希望が描かれた。

 外科医の上條萌子(玄理)は自分が執刀するはずだった珍しい心臓疾患を持つ患者のオペから担当を外され、その代わりにまたしても榊原が執刀担当となる。外科部長の倉田雄二(神尾佑)に「毎回榊原先生に難しいオペを奪われていたらこの病院の外科医は育たない」と食い下がる上條の主張はもっともだろう。本件も榊原が自ら患者に接触し、自分に手術を依頼するように仕向けていたことがわかる。榊原のことを調べ回っている院内刑事・武良井治(桐谷健太)いわく、榊原が手術を奪うのは高難易度の珍しい心臓疾患の患者に集中しているようだ。

 その代わりにと上條が担当医を任されたのが、特別室に入院してきた国会議員の岩井幸吉(ベンガル)だ。暴言騒動の批判から逃れるために仮病を使っていると噂されていた岩井だが、実際は彼の足を引っ張ろうとする連中から距離をとり守るために秘書が強制的に入院を勧めたようだ。さらに一見したところ太々しく見える岩井だが、実は弱者のために奔走する人権派の政治家だったこともわかる。そして、岩井は“病気ではないのに入院している人”でもなかった。上條は岩井の喉の違和感を見逃さず、彼に心臓疾患があることを突き止める。

 もちろんここでも榊原が手術の執刀医を名乗り出る。これだけ特定の疾患にこだわるのは、もしかすると榊原自身が過去に心臓疾患手術を失敗させた経験があるのかもしれない。その記憶を自分の中で塗り替えるかのごとく、症状を限定した手術に執着しているようにも思える。彼が過去に失敗した手術というのが、武良井の恋人で故人の夏目美咲(入山法子)だったりするのだろうか。

 しかし、岩井は榊原からの申し出を断り、最初に自分の病気を見つけてくれた命の恩人でもある上條に手術を任せたいと願い出た。その託されたバトンを受け取った上條は、失いかけていた自信や自分を医学部に入れるために過労死した父親への負い目や思い出と向き合い折り合いをつけ、乗り越えていく。榊原が言い放った「助かりたい患者が信頼できる医師に命を託す。そこにどんな不条理があろうと私は手術します」という言葉が、彼に滲む選民意識のような響きではなく、皮肉にも今回は岩井が出した心意気やアンサーが投影されているかのようで小気味良かった。榊原には、手術の実績や腕以外に、患者が自らの命を託したくなるような医師の条件や要素が存在するということが信じられないかもしれない。

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