『呪術廻戦』「渋谷事変」から「死滅回游」へ 偽夏油の遊び場となった日本と虎杖の未来は

 これからの日本では、偽夏油の言う“術師同士の殺し合い”……「死滅回游(しめつかいゆう)」が行われる。彼は既存の術師のほかに、マーキング済みの2種類の非術師を「無為転変」で覚醒させ、このゲームに参加させるつもりだ。片方は虎杖のように呪物(術師の成れの果て)を取り込んだ者、もう片方は吉野順平のように術式を所持しているが脳の構造が非術師だった者。前者は“器”としての強度を、後者は術式が使えるよう脳の構造を変えたというわけだ。

 特に呪物を取り込んだ者に関しては、“昔の術師が復活すること”を意味する。呪胎九相図の脹相・壊相・血塗が受肉した時のことを思い返せばわかりやすいが“普通”、呪物を取り込んだ者は本人の意識が残らず、受肉体(人間が特定の呪物を取り込む事で変貌した存在)になるのだ。元の人間は死んだも同然である。虎杖は特殊なケースで、宿儺も最初の時に彼が意識を失わずにいることに驚いていた。つまり、偽夏油が用意した受肉体の術師たちは現代ではなく宿儺のように昔の時代に生きた者たちなので、術式の使い方も戦闘経験も現代の術師に比べれば圧倒的に強いことが安易に想像できる。

 一方で、突然術式が使える脳になった“元非術師”たちは、突然すごいことができるようになったと驚き、困惑する者も多いだろう。高専に通っているわけでもないため、呪術とは、術式とは何かわからないものが大半だ。

 そんな2種類の術師と、虎杖ら既存の術師たちが殺し合う「死滅回游」。まさに、古代中国で横行した呪術の一種とも言われる「蠱毒」のように、強い者が生き残り、その戦いの中で生まれる新たな人類の可能性を期待するのが偽夏油の思惑である。これからの日本はそんな彼のプレイグラウンドであり、混沌を極めることになるのだ。

虎杖悠仁が迎えた夜明け

 そんな大変な事態を控えた虎杖が、静かな早朝に呪霊狩りをするシーンで幕を閉じた『呪術廻戦』第2期。振り返れば、虎杖は多くの人を死なせてしまった。「渋谷事変」のオープニング映像に彼が壁一面に広がる納骨堂の前で嘆くシーンがあるのだが、それが象徴するようにたとえ宿儺がやったとしても、今の虎杖には大量殺人を犯した自覚と罪の意識がある。そして目の前で大切な人……七海建人や釘崎野薔薇を守れずに死なせてしまったことも忘れてはいけない。高専に来て間もない頃、「正しい死」に固執していた15歳の少年のことを思い返すと、そこから数カ月しか経っていない今の虎杖の精神状態は到底、計り知れない。真人によって、宿儺によって、五条を封印した偽夏油によって何度も心を砕かれそうになった。現状は彼個人にとっても、日本全体にとっても悪くなる一方だ。それでも、夜は明ける。

 朝日を浴びながら呪霊討伐を始めるシーンが意味するのは、顔面だけでなく心にも大きな傷を残した虎杖が、これから“呪術師として”再び生きていくこと。私たちはそんな彼と仲間たちの戦いを、制作が決定した第3期「死滅回游」で見守っていくことになるのだ。

■配信情報
TVアニメ『呪術廻戦』第2期
各配信サービスにて配信中
キャスト:榎木淳弥、内田雄馬、瀬戸麻沙美、中村悠一、島﨑信長、櫻井孝宏、諏訪部順一、三瓶由布子
原作:『呪術廻戦』芥見下々(集英社『週刊少年ジャンプ』連載)
監督:御所園翔太
シリーズ構成・脚本:瀬古浩司
キャラクターデザイン:平松禎史、小磯沙矢香
副監督:愛敬亮太
美術監督:東潤一
色彩設計:松島英子
CGIプロデューサー:淡輪雄介
3DCGディレクター:石川大輔(モンスターズエッグ)
撮影監督:伊藤哲平
編集:柳圭介
音楽:照井順政
音響監督:えびなやすのり
音響制作:dugout
制作:MAPPA
「渋谷事変」オープニングテーマ:King Gnu「SPECIALZ」(Sony Music Labels)
「渋谷事変」エンディングテーマ:羊文学「more than words」(F.C.L.S./Sony Music Labels)
©芥見下々/集英社・呪術廻戦製作委員会
公式サイト:https://jujutsukaisen.jp

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