『侵入者たちの晩餐』バカリズム脚本の構造に脱帽! “1周目では気付けない”伏線の数々

 不憫ながらズル賢い重松を演じる池松壮亮に、キモい毛利の角田晃広。白石麻衣は初のヒール役・奈津美としてハマり役だった印象だ。メインキャストの中で唯一5人の侵入者を発見する、いわゆる受けの演技が求められるシチュエーションで、表面上では怯えつつも、脳内では腹黒いことを考えている正真正銘の“脱プリ”だ。乃木坂46時代に“黒石さん”として異名がついていたことを思い出させる、ドスの利いた声と“可動領域”の広い眉の動きが豊かな表情を生み出していたように思う。

 バカリズムがインタビューの中でコメントしているように1周目では気づくことができないような伏線の積み重ねもその構造を築き上げている一つひとつのパーツである。亜希子ら3人が重松とすれ違っていたり、毛利がコンシェルジュとして不在だったりと、1周目から引っ掛かりとして気づく場面は多くあるが、冒頭に亜希子が家を出る際、家事代行サービス会社・スレーヌのマスコットキャラの人形を落とした時の“音”が、後々のタンス預金への布石になっているということはなかなか気づくことはできないはずだ。

 最後に。筆者は『ブラッシュアップライフ』をHuluにて後追いで一気に楽しんだ視聴者の一人だ。リアルタイムで観たかったという少しばかりの後悔もありながら、初見でイッキ見できる贅沢もきっとある。麻美が5周目の人生に入った辺りから興奮しながらスマホにかじりつく自分がいたが、そんなことを『侵入者たちの晩餐』の第12章「毛利」に差し掛かった時にふと思い出した。観ている時間だけは、悩みや不安を忘れられる。そんなドラマとしての根幹を『ブラッシュアップライフ』、そして『侵入者たちの晩餐』は教えてくれる。

■配信情報
新春スペシャルドラマ『侵入者たちの晩餐』
TVer、Hulu、Netflixにて配信中
出演:菊地凛子、平岩紙、白石麻衣、角田晃広、池松壮亮、吉田羊
脚本:バカリズム
演出:水野格
プロデューサー:小田玲奈、榊原真由子、柴田裕基(AX-ON)、鈴木香織(AX-ON)
チーフプロデューサー:三上絵里子
企画協力:マセキ芸能社
制作協力:AX-ON
製作著作:日本テレビ
©︎日本テレビ
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