『ブラッシュアップライフ』を改めて観て感じること “選択しない選択”に対する優しさ

 さらには、3周目の人生でテレビ局に勤務する麻美が、プロデューサーデビューを打診されて「ブラッシュアップライフ」を企画する時のシナリオ原案について「タイムリープするなら死んだ友人を生き返させるとか、大勢の命を救うとかしないと」との意見を受けるシーンがあるが、そうした道を選ばず、8回同じ人生を過ごす河口(三浦透子)の存在も描かれている(後のどんでん返しが凄まじいのだが)。

 また「普通」であれば、たとえ仲間が危機に陥っていたとしても、最後の転生では人間になることを選ぶかもしれない。それでも、友達を救うためにこれまでの人生のやり直しを選んだ麻美は、彼女にとっての「正解」を選んだに違いない。

『ブラッシュアップライフ』は優れた“テレビドラマ論”だ ありふれた無数の愛おしい“今”

ドラマ『ブラッシュアップライフ』(日本テレビ系)を観ていると、思わず考える。自分ならどうするかと。そして無数の「あったかもしれな…

「最後は人間に生まれるためでも、徳を積むためでもない人生」
「来世ではなく、今世をよりよいものにするため」

 麻美は5周目にして、自分のために人生の徳を積むことから、今世をともに生きる周りの人間のために優しさを向けるようになる。

 必ずしもバリバリ働かなくても、結婚しなくても、自分の価値観や大事にしていることを理解していれば幸せになれる。『ブラッシュアップライフ』は、常に努力を重ねる生活や結婚がすべてではなく、自分自身の価値観や大切なことを把握していれば幸せになれると示しているようにも思えた。

 ドラマが示す「徳」の概念はあいまいで、世間が定義する「徳」に惑わされない普通の人生でも十分幸せを感じられることを描いている。『ブラッシュアップライフ』が私たちに与えてくれたものは、現代社会で強調される、自分らしさを持って前進することの圧力から解放される安心感だ。

 麻美のジェットコースターのような人生に笑いながらも、実際にはきっと来世でも、“ブラッシュアップ”をせずに同じ道を歩んでしまう。そんな人々にこそ、この作品は深く響くのかもしれない。

■放送情報
『ブラッシュアップライフ』
日本テレビにて、12月28日(木)6:00〜11:25、12月29日(金)6:00〜10:30一挙放送(関東ほか)
TVerにて配信
第1話:12月28日(木)6:00〜2024年1月3日(水)20:59
第2話〜第4話:12月28日(木)6:00〜12月30日(水)11:59
第5話〜第7話:12月30日(土)12:00〜2024年1月1日(月)11:59
第8話〜第10話:2024年1月1日(月)12:00〜2024年1月3日(水)20:59
Huluにて全話配信中
出演:安藤サクラ、夏帆、木南晴夏、松坂桃李、染谷将太、黒木華、臼田あさ美、鈴木浩介、バカリズム
脚本:バカリズム
演出:水野格、狩山俊輔、松田健斗
プロデューサー:小田玲奈、榊原真由子、柴田裕基(AX-ON)、鈴木香織(AX-ON)
チーフプロデューサー:三上絵里子
企画協力:マセキ芸能社
制作協力:AX-ON
製作著作:日本テレビ
©︎日本テレビ
公式サイト:https://www.ntv.co.jp/brushup-life/

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