2023年の年間ベスト企画

成馬零一の「2023年 年間ベストドラマTOP10」 日本の“テレビドラマ”だからできること

 リアルサウンド映画部のレギュラー執筆陣が、年末まで日替わりで発表する2023年の年間ベスト企画。映画、国内ドラマ、海外ドラマ、アニメの4つのカテゴリーに分け、国内ドラマの場合は、2023年に放送・配信された作品の中から、執筆者が独自の観点で10作品をセレクト。第13回の選者は、ドラマ評論家の成馬零一。(編集部)

1.『いちばんすきな花』(フジテレビ系)
2.『幽☆遊☆白書』(Netflix)
3.『日曜の夜ぐらいは...』(ABCテレビ、テレビ朝日系)
4.『量産型リコ -もう1人のプラモ女子の人生組み立て記-』(テレビ東京系)
5.『連続ドラマW フェンス』(WOWOW)
6.『VIVANT』(TBS系)
7.『THE DAYS』(Netflix)
8.『季節のない街』(ディズニープラス)
9.『ブラッシュアップライフ』(日本テレビ系)
10.『あなたがしてくれなくても』(フジテレビ系)

 1位の『いちばんすきな花』は、昨年『silent』(フジテレビ系)がヒットした脚本家の生方美久を中心としたチームが担当しており、演出も演技も生方の世界観を具現化しようとひとつになっているのが伝わってきた。「2人組」を作ることが苦手な男女4人の抱える悩みを静かなトーンで紡いでいく物語はとても独創的で、台詞や構成に戸惑いながらも、最後まで目が離せなかった。生方にとって2作目となる連続ドラマなのだが、新人脚本家の紡ぐ作家性の強いオリジナルストーリーが民放の木曜22時というプライムタイムで堂々と放送されている状況は日本のテレビドラマの豊かさを表しているのではないかと思う。

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 2位の『幽☆遊☆白書』は『週刊少年ジャンプ』で1990〜94年にかけて冨樫義博が連載していた少年漫画が原作だが、潤沢な予算と時間を費やせるNetflixの配信ドラマだからこそ可能な実写映像化だった。VFXを駆使した妖怪とのバトルシーンを筆頭とする原作漫画の再現度にばかり注目が集まりがちだが、監督の月川翔とアクション監督の大内貴仁が実写ドラマとしてのクオリティを大きく底上げしており、ひとつひとつのディテールがとても豊か。アクションとVFXを駆使すれば「ここまでやれる」ということを証明した漫画の実写化の一つの到達点である。

 3位の『日曜の夜ぐらいは...』はテレビ朝日が新設したABCテレビ製作ドラマ枠の第1作。ラジオ番組が主催するバスツアーで偶然出会った3人の女性の物語で、脚本は『ちゅらさん』や『ひよっこ』といったNHK連続テレビ小説こと朝ドラ作品などで知られる岡田惠和。先日亡くなられた脚本家・山田太一さんが1981年に執筆した『想い出づくり。』(TBS系)の令和版とも言えるドラマで、冴えない日々を過ごしているフィクションではあまり描かれることのない「普通」の人々の物語は、日本のテレビドラマのお家芸と言えるもので、今の時代の「普通」がここまで追い詰められているのだと思い知らされた。

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 4位の『量産型リコ-もう1人のプラモ女子の人生組み立て記-』は主人公のリコ(与田祐希)がプラモデルを作る姿を美しく撮った趣味ドラマ。タイトルにある「量産型」がリコを筆頭とする、優秀だが情熱が希薄で突出した個性を持たない若者を示す言葉となっており、この「量産型」という言葉を、どうポジティブに捉え直すかを描いた作品だったとも言える。

 5位の『連続ドラマW フェンス』はNHKドラマ『フェイクニュース あるいはどこか遠くの戦争の話』のプロデューサー・北野拓と脚本家の野木亜紀子が再びタッグを組んだ社会派エンターテインメント作品。沖縄で起きた連続性的暴行事件を2人の女性が追うバディモノのドラマで、映像を通して沖縄の米軍基地の問題や女性に対する性暴力の問題がリアルな手触りを持って迫ってくる。

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