『ブラッシュアップライフ』は観るたびに新たな発見がある “考察ドラマ”は次のフェーズへ

 2023年1月期に放送され話題となった『ブラッシュアップライフ』(日本テレビ系)周りが最近賑やかである。12月28日・29日に地上波で一挙再放送、さらには12月25日からは東京スカイツリータウンにあるテレビ局公式ショップにてポップアップストアも開催されている。ザテレビジョンドラマアカデミー賞最優秀作品賞、東京ドラマアウォードグランプリ、ギャラクシー賞やATP賞など国内の数々の賞の受賞のみならず、バンコクやカンヌ、さらにはシンガポールで開催された、アジア圏最大級のコンペティション「Asian Academy Creative Awards2023」で監督賞とPR・トレーラー賞の2冠を受賞するなど、異例の総ナメ状態であるのも含め、やはり作品そのものの良さが認められていると言っていいだろう。そんな、脚本のバカリズムはじめ、『ブラッシュアップライフ』のチームによる2024年1月3日放送のスペシャルドラマ『侵入者たちの晩餐』(日本テレビ系)も楽しみでならないが、まずは『ブラッシュアップライフ』の面白さを、ここでもう一度振り返ってみたい。

 『ブラッシュアップライフ』は、地元の市役所で働く実家住まいの独身女性・近藤麻美(安藤サクラ)が、ある日突然死んでしまい、このままでは来世で人間になれないことを知り、徳を積むため、人生をゼロからやり直すことになるドラマである。

 まず言及すべきは俳優陣の良さである。『怪物』、『ゆとりですがなにか インターナショナル』、『BAD LANDS バッド・ランズ』、『ゴジラ-1.0』など、2023年だけでも多くの話題作に出演している安藤サクラの演技力なくして、市役所職員、薬剤師、テレビプロデューサー、研究医、パイロットと、全ての職種で働く人々の「あるある」な日常を体現することはできなかっただろう。メインメンバーだけでなく、染谷将太、松坂桃李、三浦透子、山田真歩といった演技巧者たちが、それぞれの「日常」のリアルの解像度を上げつつ、絶妙な笑いを誘う見事さ。また、『silent』(フジテレビ系)の夏帆、『セクシー田中さん』(日本テレビ系)の木南晴夏、『ブギウギ』(NHK総合)の水川あさみと、本作と放送時期を前後して各所で快進撃を続けている同世代の俳優たちが、親友同士の自然なやり取りを実に楽しそうに演じているのも貴重な光景であり、その辺りの様子は、8月23日に発売されたBlu-ray&DVD-BOXの特典映像のメイキングからも窺い知ることができる。また、キャスト・脚本家・監督による座談会も収録されているのだが、そこから垣間見える、傑作がいかにして現場で生まれていったかの様子も興味深く、コンビニの前で皆でアイスを食べている場面で、みーぽんこと美穂(木南晴夏)だけが焼き芋を食べている理由ほか、本編を見直す上でも面白い気づきが満載である。

 本作には、いろいろな楽しみ方がある。例えば、劇中で流れるJ-POPやテレビドラマ作品の名前などを通して、同世代特有の、幼少期から学生時代に至るまで共通する懐かしさに浸ること。あるいは、同じバカリズム脚本の『架空OL日記』(読売テレビ)の延長線上のような、日常をそのまま切り取ったかのような作風に痺れること。そしてそれらの集積がある種、麻美たちが大好きな“テレビドラマ”的に壮大な「世界を救う」物語として昇華されることの素晴らしさに感じ入ること。中には「考察もの」として楽しんだ人もいるのではないだろうか。

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