『きのう何食べた?』S2に見た“変化” シロさんとケンジの周りで新たに広がった関係性
最終回を目前に控えた『きのう何食べた? season2』(テレビ東京系)。シロさん(筧史朗/西島秀俊)とケンジ(矢吹賢二/内野聖陽)の2人の何気ない日常を毎週金曜日の夜にそっと覗かせてもらえるあの時間がもう終わってしまうなんて……。
season1から積み重ねられてきた彼らや周囲の人たちの日々がしっかりとそこに息づいているかのように、season2はなんだか画面全体の色合いも淡く柔らかいものに変化している。
共に時間を重ねれば重ねるほどに、もちろん新鮮味は失われていくわけだが、本作ではその積み重ねた時間の先にしか見えてこない相手の変わらない本質や新たな一面、自身の中で気づかぬうちに刺さったままになっていた心のトゲなどが見過ごされず、年輪のように丁寧に描かれる。season1の頃は“ゲイバレ”しまいと気を張っていたシロさんが、自分たちの関係を周囲にオープンにしたことで、もちろん新たな問題にも遭遇するものの、それ以上にたくさんの関係者に囲まれるようになっていく。2人だけで囲むいつもの食卓も安心するが、互いにとって大切な人たちも含めて、思い思いの気持ちを持ち寄りながら美味しいものを共有し合える関係性が新たに広がっていく豊かさも頼もしい。各々がそれぞれと出会う前から紡いできた世界やコミュニティの中に“2人で”溶け込んでいくシロさんとケンジの姿を見るにつけ、胸にじんわりと温かいものが広がっていく。“2人だけの世界”と“それ以外の他の人に囲まれた世界”の2つがはっきりと区別されてしまっている、いわゆる“二重生活”は、やはり窮屈で息苦しいところがあるだろう。そんな境界線がまろやかに溶け合っていくさまは、時間を重ね年齢を重ねることの醍醐味の一つになり得る。
そして“家族になる”ということは、誰かを自分の人生に巻き込み、相手の人生に巻き込まれることでもあるのかもしれない。それゆえの億劫さや面倒、しがらみはもちろんあるし、関係者が増えていくことで対峙しなければいけない問題も次から次にやってくる。老眼鏡を拒み続けるシロさんのように、自分の老いとの向き合いだけでも消化しきれないところがあるのに、そこに互いの両親を含めた家族の変化に、職場や仕事での立場の変化まで加わり、“不可避”な事態に見舞われる確率は増す。