『きのう何食べた?』田中美佐子&矢柴俊博も最高の夫婦 視聴者にも届く“幸せのお裾分け”

 特に、富永さんがケンジと念願の初対面を果たした場面での矢柴の演技は、富永さんの人物像を特徴づけている。社交的だがやや無神経で、けれどあっけらかんとしていて嫌味がない、そんな人物像を可笑しみに満ちた演技で見せてくれる。シロさんとケンジの到着を人一倍ソワソワして待つ姿は妙に現実味があって面白いうえ、富永さんが心を弾ませていることが分かる。富永さんはケンジが来るや否や「あなたにずっと聞きたいことがあったんですよ」と身を乗り出すと、「筧さんは、あなたとどうやって知り合ったの?」とワクワクした顔つきで聞き出した。富永さんの発言には遠慮がないが、矢柴のにこやかな表情と明るい声色から、富永さんに悪気が一切ないことは十分に伝わってくる。何より楽しそうな富永さんは早々にケンジと打ち解けていた。

 ケンジは、富永さんのややあけすけな言動を通じて、自分のことを深く思うシロさんの一面を知る。佳代子が何気ない様子で、ケンジには見せないシロさんの一面について話すのもぐっときた。「筧さんと買い物してる時、あなたの話ばっかりしてるから」「ニッコニコで言うんだから」と佳代子は明るく打ち明ける。佳代子が満面の笑みを浮かべ、シロさんの胸の内を飾り気なく語ることで、ケンジと過ごす何気ない日々をシロさんが何よりも大切にしていることが際立っていた。「幸せもお裾分けしてもらってるって感じかなあ」という佳代子の言葉は、視聴者の胸にあたたかく響いたことだろう。

 第11話では、航の反応も魅力的だった。航はシロさんが持ってきたお弁当に「完全にお母さんが自分のために作ったお弁当じゃん」とケチをつけるのだが、じゃことごぼうの混ぜご飯を美味しそうに頬張ると満足した笑顔を見せ、憎めない。“ミラクルショット”を打つと「ねえ、筧さん、見た?」と少しはしゃいだ様子を見せるのがかわいらしい。ひねくれた性格の航は、恋人である小日向やシロさん、ケンジに対しては言いたい放題、わがまま放題だが、嬉しかったり楽しかったりすると少し素直になる。そんな航が、自分たちのいない間に佳代子と富永さんがケンジと会ってしまったことに拗ねた時の台詞がまた愛おしい。

「ずるいよ。俺、みんなで会うの楽しみにしてたのに」

 “みんなで会う”という言葉から、富永家の食事会を誰よりも楽しみにしていたことが伝わってくる。微笑ましい場面だった。

■放送情報
ドラマ24『きのう何食べた? season2』
テレビ東京系にて、毎週金曜深24:12~放送
Lemino、U-NEXTにて、各話放送終了後から第1話〜最新話見放題配信
出演:西島秀俊、内野聖陽、山本耕史、磯村勇斗、マキタスポーツ、田中美佐子、田山涼成、梶芽衣子
原作:よしながふみ『きのう何食べた?』(講談社『モーニング』連載中)
脚本:安達奈緒子
監督:中江和仁、松本佳奈、平田大輔
音楽:福島節、澤田かおり
チーフプロデューサー:祖父江里奈(テレビ東京)
プロデューサー:阿部真士(テレビ東京)、佐藤敦、瀬戸麻理子
企画監修:神田祐介
制作:テレビ東京、avex pictures
制作協力:オフィス・シロウズ
製作著作:「きのう何食べた? season2」製作委員会
©︎「きのう何食べた? season2」製作委員会 ©︎よしながふみ/講談社
公式サイト:https://www.tv-tokyo.co.jp/kinounanitabeta2/
公式X(旧Twitter):@tx_nanitabe
公式Instagram:@movie_nanitabe

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