菅野祐悟×KANATSUが語る、映画音楽の大切さ 『DAUGHTER』エンディング曲に込めた思い

KANATSU「この曲をきっかけに新しい声の魅力を引き出してもらえました」

(左から)KANATSU、菅野祐悟

――音楽の話が出たところで、KANATSUさんが本作のエンディングを担当することになった経緯を聞かせてください。

KANATSU:板野友美さんと久本雅美さんがW主演を務めた映画『イマジネーションゲーム』(2018年)で挿入歌のオーディションを受けたことがあります。それが私と菅野さんの出会いでした。その後、『イマジネーションゲーム』では挿入歌を歌わせていただくことになりました。オーディションのときは、サラ・ブライトマンやダンスナンバーを歌いましたよね。

菅野:僕は『イマジネーションゲーム』でプロデューサーと音楽を担当していたので、KANATSUさんのオーディションの審査員もやっていました。『DAUGHTER』のエンディング曲はクラシックとクラブミュージックを織り混ぜた曲調にしようと思った時に、KANATSUさんがオーディションでサラ・ブライトマンの「タイム・トゥ・セイ・グッバイ」を歌っていたことを思い出しました。その歌声が印象的だったので、今回もお願いしました。

――この話がきたとき、KANATSUさんはどう思いましたか?

KANATSU:嬉しかったです。これまでの私はポップスシンガーで、オペラはショーで歌うのみで本格的に習った経験はありませんでした。でも声の部分を「KANATSUちゃんだったらいける」とすごく褒めてくださって。『DAUGHTER』で歌う「Far Away」はオペラに寄せた曲調の歌なのですが、この曲をきっかけに新しい声の魅力を引き出してもらえました。

KANATSU

――実際、歌ってみていかがでした?

KANATSU:とても難しかったです。レコーディング前にあまり時間がなかったために、4、5日程度しか練習時間がとれないままレコーディングをすることになりました。ですので短期間でたくさん練習しました。

菅野:英語の発音もなるべくネイティブに近づけようということで、ネイティブのトレーナーさんに入ってもらったんですよ。

KANATSU:英語の発音をガチガチに見ていただきながらのレコーディングでした。

――「Far Away」を聴いて、菅野さんはどのように感じられましたか?

菅野:すごくいい感じでした。素敵に歌ってくれたので、うまくいったと思います。無理ばかり言ってしまいましたが、頑張ってくれました。

――KANATSUさんは何度か菅野さんとご一緒されていますが、今回新たに発見したことがあれば教えてください。

KANATSU:菅野さんの曲は、『イマジネーションゲーム』の挿入歌の他に、朝ドラの『半分、青い。』(NHK総合)や、草彅剛さん主演の『罠の戦争』(カンテレ・フジテレビ系)の挿入歌などを歌いました。そこでもバリバリのオペラを歌っています。『罠の戦争』ではドラマのとてもいいシーンで使ってもらえたので、嬉しかったですね。オペラという引き出しを見つけてもらったからこそ、そこをもっと伸ばそうとオペラを習い始めました。

KANATSU

――2024年はどんな活動をしていきたいですか?

菅野:来年も、連続ドラマの劇伴を皮切りに、クラシックの曲や自分のコンサートをやっていきます。『DAUGHTER』は現在5カ所ほど上映が決まっていますが、これから日本全国で公開していくので、舞台挨拶で日本中の皆さんにお会いできたらいいですね。

KANATSU:私は菅野さんに引き出してもらったオペラとポップスを掛け合わせた“ポペラ”の要素を活かした楽曲や、新しいジャンルを開拓しKANATSUという世界観をさらに確立させて多くの方に知ってもらうことが来年の目標です。

菅野:サラ・ブライトマンはオペラ調の声で皆が親しみやすい音楽を歌っていますが、そういう歌手は日本にはなかなかいません。KANATSUさんはダンスをやっているので、ダンスミュージックのノリとオペラ的な声の良さが一つになると、KANATSUさんのワールドが出来上がるんじゃないかと思いますね。今後そういうものを追求していけたら、面白いと思います。

(左から)菅野祐悟、KANATSU

――では、最後に映画の見どころをお願いします。

菅野:この『DAUGHTER』は、お父さんと娘の話で、いわゆる死生観のようなものを取り扱っています。誰しも親子のことでは悩んだり、苦しんだり、感謝したりと、いろんな思いがあるものです。でも、親はいつか死んでしまうし、自分は子供より先に亡くなってしまう。「お別れ」は誰にでも訪れますが、それを一つの切り口にして希望や光を感じてもらえるような作品になっていると思います。KANATSUさんの歌も流れますし、音楽や映像美にもすごくこだわって作っているので、楽しんでいただきたいと思います。

■公開情報
『DAUGHTER』
ヒューマントラストシネマ渋谷ほかにて公開中
出演:竹中直人、関川ゆか、上地由真、近藤勇磨、若林瑠海、松代大介、奥田圭悟、ゆのん、美莉奈、かとうれいこ
監督・音楽:菅野祐悟
脚本:宇咲海里
撮影:Ussiy
オープニング曲:SUNGJE「Dream Again」
エンディング曲:KANATSU「Far Away」
制作:Megu Entertainment株式会社
企画・プロデュース:酒井伸泰
2023年/日本/G/53分
配給:SAIGATE
©︎Megu Entertainment
公式サイト:https://saigate.co.jp/daughter/

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