小関裕太が“年齢”に感じる面白み 30代までの“余白”は「焦ることなく、のんびりと」
日本映画専門チャンネルにて、特集「小関裕太に落ちたい」が放送される。本特集では、主演映画『Drawing Days』(2015年)から、異国を旅する様子に密着した『小関裕太 22你好』(2017年)、『Kiitos![キートス]~Yuta Koseki in Finland~』(2019年)、未ソフト化の『主観ドラマ オートリバースの恋』(2020年/NHK BS)、舞台『FROGS』(2013年)、そして中川龍太郎が監督を務めたオリジナルショートドラマ『メロスの誕生』(2023年)を放送。活躍を続ける小関は自身のこれまでの軌跡に何を思っているのか。放送を前に話を聞いた。
“挑戦”が根底にある作品の数々
――特集「小関裕太に落ちたい」への期待と、タイトルの印象を聞かせてください。
小関裕太(以下、小関):『Drawing Days』は19歳で撮影して20歳のときに発表した作品ですが、そこから21、22、23、24歳……と1年に1回ものづくりをしてきて、今年は日本映画専門チャンネルさんとご一緒できる機会をいただきました。「小関裕太に落ちたい」というタイトルはちょっと恥ずかしいですけど(笑)、今まではDVDを買ってくださるようなコアなファンの方だけが知っていた作品を、よりたくさんの方に観ていただける。当時から「より多くの人に観てほしい、観てもらえるような作品にしていきたい」と各監督とも話しながら作っていたので、それが叶うことが感慨深くて、すごく嬉しいです。
――『Drawing Days』はどんな作品でしょうか?
小関:原(桂之介)監督と出会い、当時のマネージャーさんがプロデューサーになって、一緒に手作りした映画です。僕自身10代後半は個性について考えたり、自分の持っているもの、持っていないものを見つめる時間がたくさんあって、そんなリアルな青年の悩みを映画に凝縮させられたらいいな、という思いから始まりました。僕は画家の役を演じていて、どこか台湾映画のような、人間味が静かに描かれている作品です。
――撮影の思い出はありますか?
小関:1時間半くらいの長編映画を6日間で撮ったので、照明部だったり、プロの方々には本当に申し訳ないくらいのスケジュールで。そんな中、アミューズの新入社員たちが研修として来てくれて、(大きな鍋を混ぜる動作をしながら)みんなでカレーを作ったりするような、本当にぬくもりにあふれた現場でした。すごく大変でしたが、充実感の方が大きかったですね。
――すべてオススメだとは思いますが、特に観てほしい作品は?
小関:本当に好みがわかれると思いますけど、やっぱり『Drawing Days』ですかね。何者でもない自分にたくさんの人が協力してくれて、作品の完成に向かって走った時間はすごく充実していました。それに、初めて映画館で上映されたときも、ものすごく感動したんですよ。まず映画館でなかなか上映させてもらえなくて……。権利とか実績とかいろいろな関係があって、せっかく自分が胸を張って面白いと思える作品ができたのに、上映してもらえないんだ、と。その中で手を挙げてくださったのが、今はもうなくなってしまった新宿の映画館で、「上映できる」と決まったときの感動が忘れられないです。ほかの作品も自分にとっての“挑戦”が根底にあって、『小関裕太 22你好』はドキュメンタリー映画のようなものを撮ってみたいな、と思って作った作品で、『Kiitos![キートス]~Yuta Koseki in Finland~』は「写真展を開きたい」という思いをきっかけに始めた企画です。フィンランドという憧れの地を“自分のファインダー”を通して見たときに、どんな世界に写るのか。写真展に至るまでの撮影風景や、現地で出会った方々にインタビューしている姿を映像化しています。本当にどの作品もジャンルが違うので、その挑戦を観てもらえたら嬉しいです。
――いろんなジャンルの作品を通して、小関裕太の物作りを体感できるわけですね。
小関:そうですね。僕自身“年齢”に面白みを感じていて、「こんな経験もできるんだ」という喜びや、「理想はこうだったけどな」といった悔しさがある中で、1年に1つ作品を作ることで「今ってどういうものなんだろう」と考えるきっかけにもなっていて。どれもすごく大事な作品ですし、これが放送されるというのは大きなことだなと思います。
――その中で、今年は『メロスの誕生』という新たな作品を発表されます。『走れメロス』が題材ですが、これはどのような経緯で?
小関:中川(龍太郎)監督曰く、メロスの姿が僕と重なって、正義感だったり、走っていく姿だったりを現代風に描いてみたいと。僕は今回、「仕草」を1つのアイデアの種としてこの企画を進めたいという思いがあったので、いただいた本の中で「仕草」をどう表現していくか、どう発展させていくかを考えながら演じていました。
――『走れメロス』を新解釈した物語だと聞いたときの印象は?
小関:改めて『走れメロス』を読み返して台本と見比べたときに、大筋と少しのセリフはオマージュとして一緒だけど、ちゃんと現代的になっている印象を受けました。現場には本当にたくさんのエキストラの方が集まってくれて、とにかく盛り上がってくれるんですよ(笑)。多国籍だから言語もわからないし、どういうシーンかも絶対にわかっていないのに、僕が「ふ~!」って言うと、みんな「ふ~!」って(笑)。すごくハッピーな現場でしたし、『走れメロス』が執筆された時代とは違う現代の価値観だったり、国籍問わずみんなが集まる空間にある温かさは、今作らしい部分なのかなと思います。笑いがたくさん組み込まれていながらも、『走れメロス』にもある人間味が現代ならではの解釈で描かれているので、基盤はしっかりしている。新しいドラマを観ているような不思議な感覚になると思います。