与田祐希、『量産型リコ』は最大のハマり役だった アイドル像のギャップが生む“奥行き”
そしてもう一つの本作の魅力、それはプラモデルを中心に多くの人間ドラマが描かれているという点である。同作は1話完結型ではあるものの10話のストーリーは連なっており、ドリクレのメンバーであるリコ、高木真司(望月歩)、浅井祐樹(前田旺志郎)、後田浩一郎(矢柴俊博)、熊本侑美(市川由衣)がユニコーン企業を目指して奮闘する姿が描かれる。これらの登場人物に共通するのは“量産型”であるということだ。リコ、真司、浅井の3人は幼なじみでスタートアップ企業を設立した。一見すると熱量の高い優秀な若手起業家にも捉えられるが、実際には熱量はあるものの能力は平凡な会社員(であると感じている)。そんなリコたちは作中で“量産型”として描かれているが、彼らはプラモデルと出会うことで量産型なりに自分たちの価値を見つけていく。
この“量産型”を象徴しているのがオープニングの映像だ。登場人物は「ゲート」と呼ばれるつなぎ目に繋がれており、その光景は実際のプラモデルのパーツを想起させる。現実世界で見れば量産型ではない俳優陣が量産型として振る舞う姿は批評性が効いていて面白い。
9話では、リコに影響を受けたライバル会社の社長・中野京子(藤井夏恋)からプラモ対決を挑まれる。中野は、リコと同じシャア専用ザクIIを作るが、“量産型”へのこだわりを貫き通したリコに敗北してしまう。だが、その後中野が自分自身と向き合い、心機一転して事業に向き合うという感動的なストーリーが待ち受けている。黙々と作業し、自分なりのこだわりを表現するプラモデルは、人生を変えるきっかけにもなることが描かれ、中野の変化がどこか映し鏡のように視聴者の背中も押してくれる。『量産型リコ』は、ドラマティックな展開が起こらないからこそ、私たちの何気ない日常に溶け込んでくる作品であり、こうした人間模様や登場人物の成長こそが、本作の本質的な面白さでもあるのだ。
ちなみに、本作のエンディングでは、矢島模型店を舞台にその回で登場するプラモデルと登場人物たちがお菓子を食べたり、ダンスしたり、ジャンケンしたりと、毎回趣向を凝らした映像が流れるので、注目してみてほしい。Blu-ray&DVD BOXではこのエンディングの撮影風景のほかに、与田祐希のインタビュー、メイキング映像が収録されており、作品を視聴した後に見るとより一層楽しめるはずだ。すでに続編が恋しくなっている方も多いとは思うが、この機会に『量産型リコ』シリーズを振り返ってみてはいかがだろうか。
■リリース情報
『量産型リコ -もう1人のプラモ女子の人生組み立て記-』
Blu-ray&DVD-BOX発売中
Blu-ray-BOX:20,900円(税込)
DVD-BOX:16,720円(税込)
【仕様】
分数:本編240分/ディスク枚数4枚(本編+特典)
【特典】
・映像特典:スペシャルメイキング映像
・封入特典:特製ブックレット
出演:与田祐希(乃木坂46)、望月歩、前田旺志郎、市川由衣、矢柴俊博、藤井夏恋、石田悠佳(LINKL PLANET)、天川れみ(LINKL PLANET)、森下能幸、マギー、田中要次
企画・原案・プロデュース:畑中翔太(BABEL LABEL)
脚本:マンボウやしろ、畑中翔太、オコチャ、山元悠加
監督:三石直和、ヤングポール
音楽:岩本裕司
オープニングテーマ:樋口楓「ぶっ飛んでラニカイ」(Lantis)
エンディングテーマ:LINKL PLANET「Part to Part」
プロデューサー:漆間宏一(テレビ東京)、寺原洋平(テレビ東京)、涌田秀幸(C&I エンタテインメント)
制作:テレビ東京、C&I エンタテインメント
制作協力:BANDAI SPIRITS
発売元:「量産型リコ」製作委員会2023
販売元:株式会社ハピネット・メディアマーケティング
©「量産型リコ」製作委員会2023