与田祐希、『量産型リコ』は最大のハマり役だった アイドル像のギャップが生む“奥行き”

 乃木坂46の与田祐希がテレビ東京系にて主演を務めた連続ドラマ『量産型リコ -もう1人のプラモ女子の人生組み立て記-』のBlu-ray&DVD BOXが12月6日に発売された。与田が主演を務めるということも大きな話題を呼んだが、何よりも多くの大人の心をくすぐったのは、実在するプラモデルが登場するということだ。かつて子ども時代に楽しんでいた人や、大人になった今でも楽しんでいる人、もしくはプラモデルに人生で触れてこなかった人、その誰でも楽しめるのが同シリーズの魅力である。

 本作は、2022年7月に与田が地上波連続ドラマ初主演を務めた『量産型リコ -プラモ女子の人生組み立て記-』(テレビ東京系)の世界とは別の“もう1つの世界”を生きる主人公・小向璃子(与田祐希)の成長を描くホビー・ヒューマンドラマ。“もう1つの世界”とあるように、前作のパラレルワールドにおいて、リコは大学時代に友人と立ち上げたスタートアップ企業「ドリームクレイジー」(略してドリクレ)の社長として登場し、スタートアップ企業支援プロジェクト「ドッグラン」を通じてユニコーン企業を目指していく。設定は大きく違うものの与田をはじめ、望月歩や前田旺志郎、藤井夏恋といったおなじみのメンバーが立場を変えて登場しており、前作からのファンも楽しめる内容となっている。

 制作費が限られている深夜ドラマの中で、なぜ本作はここまで成功を収めることができたのか。ユニコーンガンダムや仮面ライダー、マジンガーZといった実在するプラモデルを組み立てるだけのドラマであれば、おそらくここまで続く人気作とはなっていなかっただろう。そこには“アイドル”と“プラモデル”という組み合わせの妙がある。

 プラモデルと聞くとまだまだ男性的なイメージが強いため、柔らかな雰囲気を纏った与田がプラモデルを組み立てるという構図は新鮮な印象を与える。成功例としては、少女×戦車を描いたテレビアニメ『ガールズ&パンツァー』や、少女とメカが組み合わさった『ストライクウィッチーズ』が近い。男性的なものが、かわいいもの(ここではアイドル)と組み合わさることでニュートラルに楽しむことができるのだ。実際に与田はBlu-ray&DVD BOXの特典映像の中で「細かい作業が苦手です」と語っているように、決してプラモデル制作が上手なわけではない。だが、むしろその未熟さがプラモデル制作の敷居を下げることに成功している。

 本作は1話ごとに完結しており、プラモデル制作のシーンは毎話中盤〜後半に訪れる。そのシーンの中心となるのは、基本的にはプラモデルの作り手である与田の接写だ。プラモデルをモチーフとしながらも、与田がプラモデル作りに没頭する表情をさまざまな角度から捉えることで、あくまでもアイドルドラマとしての体裁を保っている。この構図は『孤独のグルメ』(テレビ東京系)などのグルメドラマに近しいものがあり、与田が夢中に取り組む姿は自然と観られてしまうのだ。

【60秒トレーラー解禁】木ドラ24「量産型リコ-もう1人のプラモ女子の人生組み立て記-」| テレビ東京

 与田はこれまで『日本沈没ー希望のひとー』(TBS系)は例外として、金属バット振り回す“クーデレ美少女”を演じた『ぐらんぶる』(2020年)しかり、5代目総長の妹として暴走族を一喝する『OUT』(2023年)しかり、どこか癖のある役を演じることが多かった。だが、乃木坂46の与田はというと、従来のアイドル像に近しいイメージがある。『量産型リコ』で演じるリコは与田自身ともそう遠くはないキャラクターであり、そうしたアイドル像とのギャップとプラモデルというニッチな題材が上手くハマり、ドラマとしての奥行きが生まれている。

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