押井守×神山健治、『攻殻機動隊 SAC_2045』の結末を議論 「押井さんは変わりました」

 劇場版『攻殻機動隊 SAC_2045 最後の人間』のラストでは、コードを抜かないという道を選ぶことで、現実と虚構とが重なり合った状態のままにし続けるか、抜くことによって現実だけの世界に戻すべきかといった決断を、素子が委ねられるシーンが登場する。これについて押井が、「神山は結論を出したくなかったのでは」と指摘し、神山が「そう見ましたか」と受けて、判断に違いがあることをほのめかした。

 押井は、二者択一は物語を展開していく上で必要な設定で、「常にもうひとつの選択肢、第3の選択肢があって、それを探してほしいが故に二択を出す」といった作劇の上でのテクニックであることを紹介。その上で、「素子は現実の悲惨さを知っている。そこにしか人間が生きる場所がないと分かっている。自分が夢を見ることは自由だが、世の中が夢を見ることは許さない」といった理由から、コードを抜いて現実へと回帰する道を選ぶのではと分析した。

 答えて神山は、「押井さんは変わりました。年を取りました」と、自分の考えとは違っていることをほのめかした。「『攻殻機動隊 S.A.C.』に『映画監督の夢』というエピソードがあって、その時は素子は躊躇なくコードを抜いたが、20年が経って僕自身が変わったし、世の中も変わった」と神山。先に行われたキャスト陣が登壇した舞台挨拶で、バトー役の大塚明夫が選んだ答えも自分と同じだったとも言い、押井とは違った答えを持っていることを話した。ただ押井のような見解を否定はせず、「観た人の判断でいいのではないか」とも話しており、結局は観客に委ねられたと言えそうだ。

(左から)押井守、神山健治

 トークイベントの最後に、神山監督は「長きにわたって続いて、シリーズで新作ができるたびにお客さんが来てくれて感謝しています」と話し、師匠との対談に大勢が集まってくれたことに感謝してトークイベントを締めくくった。

■公開情報
『攻殻機動隊 SAC_2045 最後の人間』
3週間限定公開中
キャスト:田中敦子、中博史、大塚明夫、山寺宏一、仲野裕、大川透、小野塚貴志、山口太郎、玉川砂記子、潘めぐみ、津田健次郎、曽世海司、喜山茂雄、林原めぐみ
モーションアクター:草薙素子、川渕かおり、荒巻大輔、曽世海司、笠原紳司、岡田地平、武井秀哲、山城屋理紗
原作:士郎正宗『攻殻機動隊』(講談社KCデラックス刊)
総監督:神山健治、荒牧伸志
監督:藤井道人
演出・編集:古川達馬
脚本:神山健治、檜垣亮、砂山蔵澄、土城温美、佐藤大、大東大介
キャラクターデザイン:Ilya Kuvshinov
CGディレクター:松本勝
3Dキャラクタースーパーバイザー:松重宏美
プロダクションデザイナー:臼井伸二、寺岡賢司、松田大介
モデリングスーパーバイザー:田崎真允
バックグラウンドモデリングスーパーバイザー:市川聡
リギング、キャラクターFXスーパーバイザー:錦織洋介
リギングスーパーバイザー:井上暢三
モーションキャプチャディレクター:宇土澤秀公
レイアウトスーパーバイザー:崔佑碩
アニメーションスーパーバイザー:山口雄也
エフェクトスーパーバイザー:清塚拓也
ライティング、コンポジットスーパーバイザー:高橋孝弥
テクニカルスーパーバイザー:大桃雅寛
音楽:戸田信子、陣内一真
サウンドデザイナー:高木創
主題歌:millennium parade「Secret Ceremony」「No Time to Cast Anchor」
音楽制作:フライングドッグ
主題歌協力:ソニー・ミュージックレーベルズ
制作:Production I.G、SOLA DIGITAL ARTS
製作:攻殻機動隊2045製作委員会
配給:バンダイナムコフィルムワークス
©士郎正宗・Production I.G/講談社・攻殻機動隊2045製作委員会
公式サイト:www.ghostintheshell-sac2045.jp
公式X(旧Twitter):@gitssac2045

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