朝ドラ『ブギウギ』小夜役・富田望生の出番はもう終わり? “孤独”なスズ子が切ない

 第43話で心苦しかったのは、梅吉とスズ子の場面だけではない。辛島(安井順平)の言葉にやりきれない気持ちになる。

 警察から注意を受け、スズ子は大人しく歌うのだが、その客席には空席が目立つ。「このままじゃ、梅丸楽劇団は解散だ」と辛島は言う。警察の言うとおりにしていたら取り返しのつかないことになると嘆くスズ子に、辛島は穏やかな声色ながらも冷ややかに「警官に、袖の下でも渡すのかい?」と問う。元の梅丸のステージに戻せるなら、と意気込むスズ子に辛島が見せたのは、楽団に寄せられた非難の声だった。

 これまで大物作曲家や演出家、歌手らとの板挟みに苦しんできた辛島だが、楽団のため、そして音楽を楽しみたい観客のために乗り越えてきた。しかし今、辛島が置かれている状況は、そう簡単に乗り越えられないものだ。以前から大衆の一部から非難の声が寄せられていた。それが今や、楽団の存在を否定する声は一部では済まなくなっている。「音楽を楽しみたい人たちとただしたい人たちの板挟みだよ」と打ち明ける辛島の声色には、やるせなさが感じられる。

「誰のために、何をすればいいのか分からなくなる……」

 思うような演出ができなくなり、観客は日に日に減っていく。けれど、これまで通りの演出を行えば、“ただしたい人たち”からの非難が殺到する。辛島の困ったような表情はいつものことかもしれない。けれど、スズ子と向き合う辛島の面持ちには、がんじがらめの現状を憂う彼の本心が滲み出ていた。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『ブギウギ』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
出演:趣里、水上恒司、草彅剛、蒼井優、菊地凛子、水川あさみ、柳葉敏郎ほか
脚本:足立紳、櫻井剛
制作統括:福岡利武、櫻井壮一
プロデューサー:橋爪國臣
演出:福井充広、鈴木航、二見大輔、泉並敬眞、盆子原誠ほか
写真提供=NHK

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