『下剋上球児』タイトルに込められた意味とは? 負の歴史変えた快挙の原動力

 勝つために、乗り越えなくてはならないものがある。『下剋上球児』(TBS系)第6話で、越山高校野球部は10年以上続く負の歴史を塗り替えた。

 2017年夏。ザン高は三重県大会予選に挑んだ。目標は悲願の「夏に一勝」。初戦の相手は昨年ベスト8の五十鈴高校。1回裏、五十鈴の攻撃で、先発の犬塚翔(中沢元紀)は連続ヒットで打ち込まれる。迎える3番ピッチャー椎野(松本怜生)の打球はショート富嶋(福松凛)の送球エラーを誘い、五十鈴が2点を先取する。さらに1点を追加した五十鈴が3点をリードし、試合を優位に進めることになった。

 さかのぼること1年前、教員免許を偽造したことがバレて、南雲(鈴木亮平)は越山高を去った。捜査は遅々として進まなかったが、ようやく南雲に対する処分が下された。不起訴となった背景には、野球部をはじめとする教え子たちの尽力があった。4番の楡(生田俊平)が発起人となった嘆願書の署名は、南雲を知る卒業生や地元の商店主、校長の丹羽(小泉孝太郎)が名前を連ねた。南雲が生徒のため親身になって世話してきたことを、皆が覚えていたのだ。

 不起訴になったものの南雲の前途は厳しかった。顔の見える地元で採用してくれる企業はなく、仕事の口を探しては断られる日々を送る。妻の美香(井川遥)に会いに行った東京で、美香の元夫である小柳(大倉孝二)から心ない言葉を浴びせられ、夫婦の間の空気もぎくしゃくする。夫、父として肩身の狭い思いをしていた南雲にとって、唯一心が休まるのは、自宅に泊まった根室(兵頭功海)のボールを受ける時間だった。

 南雲のいない越山高校では、山住(黒木華)が監督に就任した。「パワプロでしか監督やったことがない」山住は、星葉高校監督の賀門(松平健)の協力を得ながら、野球部の強化に乗り出す。そこに、山住の過去を知る他校の生徒が現れた。南雲に続いて山住まで、と落胆しかけたが、結果的に生徒側の虚言とわかって胸をなでおろした。山住ははめられたことになるが、南雲と山住の出来事から、一見すると安定した基盤に根差した教師という職業が、実はあやういバランスの上に成り立っていることが伝わってきた。

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