『どうする家康』タイトルバックが第44回だけのSPエディションに 制作経緯を担当者が語る

 毎週日曜日に放送されているNHK大河ドラマ『どうする家康』。本作のテーマ音楽を担当している稲本響、タイトルバックの制作を担当した菱川勢一、演出統括・加藤拓のコメントが公開された。

 本作は、ひとりの弱き少年が、乱世を終わらせた奇跡と希望の物語。誰もが知る歴史上の有名人・徳川家康の生涯を新たな視点で描く。主人公・家康を松本潤、脚本を『コンフィデンスマンJP』シリーズなどの古沢良太が担当する。

 11月19日放送の第44回「徳川幕府誕生」はテーマ音楽とそれに乗せて流れるタイトルバックが一夜限りのスペシャル仕様として放送された。

 音楽を手がけた稲本は、「『どうする家康』では、家康公が年齢を重ねると共に、演奏するピアノの年代も古くし、4台のニューヨーク・スタインウェイをNHKのスタジオに持ち運んでレコーディングを行なっています。その4台全てを弾き分け、逆再生やピアノミュート(特許第4572092号)も使って数百にも及ぶフレーズを重ねて楽曲を完成させました。クラップ(手拍子)の音もピアノです」と制作の裏側を明かす。

 タイトルバックデザインを担当した菱川は、「葛藤を乗り越えながら太平の世を目指した家康の胸中を、幾重の山が静かに代弁するようにタイトルバックとして表現できたらと。数々の別れや、出会い、裏切りと忠誠の中から戦のない未来を見続けた家康の生き様。新たな春を迎えて舞う桜。見守る富士の山。戦のない史上最長とされたひとつの時代の江戸時代。今の私たちもまた『どうする?』と問われながら生きている中で、その幕開けに至るまでの物語の背景から何を気付かされたのでしょうか。その意味はきっとこのドラマの先に見つかるのでしょう」と制作意図を述べた。

コメント

稲本響(音楽)

本日オンエアされました大河ドラマ「どうする家康」第44回のオープニングテーマ曲ですが、これまでのピアノコンチェルトスタイルではなく、ピアノだけで全てのパートを演奏しているスペシャル版となります。これまで、多くの方々が「どうする家康」のメインテーマ曲をブラスバンドやリコーダーなど、様々な編成で素晴らしい演奏をしてくださり、SNSなどにも投稿してもらえていることが本当に嬉しくて、沢山の刺激をいただきました。何か作曲者本人にもできることがないかとずっと考えていました。その結果、ピアニストである僕自身が、NHK交響楽団の皆さんと共に作り上げたサウンドをイメージしながら、オーケストラパートも含めた全てのパートを1人で多重録音で演奏するというアイデアを形にしました。『どうする家康』では、家康公が年齢を重ねると共に、演奏するピアノの年代も古くし、4台のニューヨーク・スタインウェイをNHKのスタジオに持ち運んでレコーディングを行なっています。その4台全てを弾き分け、逆再生やピアノミュート(特許第4572092号)も使って数百にも及ぶフレーズを重ねて楽曲を完成させました。クラップ(手拍子)の音もピアノです。これまでもタイトルバックの菱川勢一さんは、音楽の余韻にまで神経を張り巡らせて映像を作ってくださっていました。そんな菱川さんも驚かせたいと思って4台ピアノVer.を録音したのに、それを知った菱川さんからまた新たな映像が上がってきて、楽しいイタチごっこです。この1年、毎週この楽曲を聞き続けてくださっている視聴者の皆さん、本当にありがとうございます。一夜限りの遊び心をお楽しみいただけたなら、こんな幸せなことはありません。

菱川勢一(タイトルバックデザイン)

関ヶ原の戦いを経て、徳川幕府へ。オーケストラ編成のオープニング曲を第44回のために4台のピアノを使用して表現した稲本響さんの特別曲を聴いたのは突然のことでした。「ミックスを終えました」との知らせを受けて、演出統括の加藤拓さん、スタッフの方々と共に稲本さんのもとを訪ねました。曲を聴いた帰路で、創作意欲に駆り立てられました。まるで円相を描くように一筆の表現に取り組みました。葛藤を乗り越えながら太平の世を目指した家康の胸中を、幾重の山が静かに代弁するようにタイトルバックとして表現できたらと。数々の別れや、出会い、裏切りと忠誠の中から戦のない未来を見続けた家康の生き様。新たな春を迎えて舞う桜。見守る富士の山。戦のない史上最長とされたひとつの時代の江戸時代。今の私たちもまた「どうする?」と問われながら生きている中で、その幕開けに至るまでの物語の背景から何を気付かされたのでしょうか。その意味はきっとこのドラマの先に見つかるのでしょう。ドラマとして現代に残そうと長い年月をかけて制作に勤しんだスタッフの皆さま、音楽の稲本響さん、応援してくださった視聴者の皆さま、出来る限り純粋創作ができるように環境を整えてくれた会社のスタッフたち、叱咤激励をしてくれた家族、関わったすべての方々に感謝の気持ちでいっぱいです。約二年間、素晴らしい創作の機会をありがとうございました。これから先、自分も何かに迷ったら見返そうと思います。

加藤拓(演出統括)

第44回のメインテーマはテーマ音楽もタイトルバック映像もスペシャルバージョンでした。見果てぬ夢を追うかのような、長い長い旅をゆくかのような、眼下に連なるいくつもの山を越えて飛ぶ視点。第3弾タイトルバック映像を完成させた菱川さんが「テーマ音楽のフルピアノバージョンとか作んないの?」と突然聞いてきました。菱川さんと稲本さんはNHKドラマ『ストレンジャー~上海の芥川龍之介~』でもコラボしているので、稲本さんのピアノの素晴らしさをよく知っています。「フルピアノバージョンができたら新しくタイトルバック作るの?」とたずねると笑って答えませんでしたが、実はほぼ同時に稲本さんから「テーマ音楽のフルピアノバージョンを作りたい」と連絡があったのです。ピアニストである稲本さんが「フルピアノバージョンを作る」とは「自ら演奏する」ということで、それはそれは楽しみでした。NHKスタジオに4台のグランドピアノを運び込み、すべてのパートを独りで弾き続け……完成したのがこのスペシャルバージョンのテーマ音楽です。菱川さんに「本当に出来たよ」と連絡し、4台ピアノVer.を聞いた菱川さんはアトリエにこもり、音楽に応えるようにタイトルバック・スペシャルエディションを描き出しました。関ヶ原の決戦を終え、束の間、家康の夢をみるかのような音楽と映像は、二人の密度の濃いコラボレーションによって生まれました。

■放送情報
『どうする家康』
NHK総合にて、毎週日曜20:00~放送
BSプレミアム、BS4Kにて、毎週日曜18:00~放送
主演:松本潤
脚本:古沢良太
制作統括:磯智明
演出統括:加藤拓
音楽:稲本響
写真提供=NHK

関連記事