『ブギウギ』茨田りつ子は菊地凛子にしか演じられない? 朝ドラで生み出す“スター像”

 本作の公式ガイド『連続テレビ小説 ブギウギ Part1』(NHK出版)にて菊地は、淡谷のり子という偉大な存在を非常にリスペクトしていることを明かしたうえで、「淡谷さんは、軍歌は歌わないという信念を貫いた方。その強さの一方で、やっぱり表現者なのでちゃんと誰かに寄り添える心持ちの方だったと想像しています。強いだけでなく、いろんなことを思いやれる、理解できる心のひだがすごくすてきなんです」と述べている。この役を演じる菊地だからこその、淡谷のり子に対する視点があるようだ。

 さらに菊地は、「そんな方がモデルだから、りつ子にも歌手として大変な時期を過ごす中で、スズ子と手をつなぎたいような気持ちになる瞬間があったんじゃないかなと想像しています。その感情や2人の関係性は、今の私にもすごく響きますね」と続けている。

 あくまでもモデルだとはいえ、実在した人物を演じるのにはかなりのプレッシャーがあるのだろう。それも、繰り返すように日本の芸能界を代表する大スターの役である。笠置シズ子をモデルとしたスズ子を演じる趣里もそうだが、これらの役を任された彼女たちにしか分からない苦悩があるに違いない。そんな趣里と菊地だからこそ築くことのできるスズ子とりつ子の関係性もまたあるはずである。

 さて、そんな菊地もまた言わずと知れたスターである。それも国際的な、だ。

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 アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督による映画『バベル』(2006年)で世界の映画シーンで認知されて以降、スペイン映画『ナイト・トーキョー・デイ』(2009年)、ハリウッド大作『パシフィック・リム』(2013年)など、彼女は世界を舞台に着実にキャリアを重ねてきた。日本の裏社会をアメリカ人新聞記者の視点で描いた『TOKYO VICE』(2022年/WOWOW)での好演も記憶に新しい。2023年は日本映画で初めて単独主演を務めた『658km、陽子の旅』が公開され、彼女の演技は海外でも高い評価を得た。

 その彼女が国民的ドラマである「朝ドラ」に“大スター”の役として登場するのが興味深い。菊地凛子だからこそ生み出すことのできるスター像が、菊地凛子にしか生み出すことのできないスター像が、『ブギウギ』には間違いなく刻まれるはずである。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『ブギウギ』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
出演:趣里、水上恒司、草彅剛、蒼井優、菊地凛子、水川あさみ、柳葉敏郎ほか
脚本:足立紳、櫻井剛
制作統括:福岡利武、櫻井壮一
プロデューサー:橋爪國臣
演出:福井充広、鈴木航、二見大輔、泉並敬眞、盆子原誠ほか
写真提供=NHK

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