『ブギウギ』草彅剛演じる羽鳥善一のモデルはどんな人物? 作曲家・服部良一の人生を辿る

 NHK連続テレビ小説『ブギウギ』第6週から、スズ子(趣里)は生活の場を東京へ移した。新たに創設される梅丸楽学劇団(UGD)へ移籍するのだ。初めての東京で秋山(伊原六花)を連れ回しながら3時間も歩き回ったスズ子は、それでも落ち着かず夜もうまく寝られなかった。ワクワクした気持ちと同じくらい、これから起こる出来事にドキドキしていることが伝わってくる。

 スズ子の到着を首を長くして待っていたのが、草彅剛が演じる作曲家の羽鳥善一だ。羽鳥はUGDのショーのための楽曲を作ったのだが、東京には自分の曲を思い通りに歌ってくれる歌手がいなかったという。スズ子が羽鳥のお眼鏡にかなうのかが、最初の難関となりそうだ。

 善一のモデルとなっているのが、時代を象徴する国民的ヒット曲を連発し、和製ポップスの礎を築いたひとりである作曲家の服部良一。良一は大阪に生まれ、スズ子と同じように大阪で育った。小学生のころから音楽の才能を発揮したが、学校を卒業後は商人になるために昼は働き、夜は商業学校に通うという日々を送っていたという。その後、家族の勧めで、好きな音楽をやりながら給金がもらえるという少年音楽隊に一番の成績で入隊する。しかしその2年後に、第一次大戦後の不景気もあって音楽隊は解散してしまう。

 この不景気は、スズ子たちが「桃色争議」を起こすきっかけとなったものでもあるので、善一とスズ子は過ごしてきた環境が似ているのかもしれない。

 少年音楽隊でサックスとフルートの技術を身につけた良一はラジオ放送用に結成された大阪フィルハーモニック・オーケストラに入団。ここで良一は外国人指揮者から才能を見出され、音楽理論・作曲・指揮の指導を受けている。また、この頃にジャズと出会い、オーケストラ活動の傍らジャズ喫茶でピアノを弾いていたという。

 しばらくして良一はレコード会社の専属作曲家となるが、当時のヒット曲を剽窃したような曲を作るような仕事に嫌気がさして上京。コロムビアの専属作曲家となり、スズ子がラジオで聴いて感銘を受けた「別れのブルース」の原曲を作曲している。

 こうして善一のモデルとなった良一の来歴を見てみると、ここに来るまでもかなり山あり谷ありの人生を送っていることが窺える。善一も苦労人のようで、『ブギウギ』の第5週では今回のスズ子と同じように、善一が列車で東京に向かう様子が描かれ、相席する少年に、ジャズの良さを語りながら軽快な音楽を口ずさむ姿があったが、そのジャズを実際に楽曲にするために5年もかかっている。

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