『大奥』蓮佛美沙子&佐津川愛美の命をかけた“反撃” 男女の立場がまたもや逆転する

 「市中に人痘所を作って、黒木さんはそこの頭かなんかに収まった。どう、違う?」という平賀源内(鈴木杏)の予想は、そこから少し時を経て見事に的中した。

 8代将軍・徳川吉宗(冨永愛)の時代から脈々と受け継がれてきた思い。それは赤面疱瘡を撲滅し、男子を産んだ母親に安寧をもたらすこと。しかし、その試みは母性を、いや人心を持たぬ一橋治済(仲間由紀恵)によって悉く邪魔されてきた。そんな治済への“反撃”が描かれたNHKドラマ10『大奥』第15話。青沼(村雨辰剛)に人痘を施された徳川家斉(中村蒼)のもと、黒木(玉置玲央)たちが再び赤面疱瘡の撲滅のために立ち上がる。

 母である治済が、自身の子を間引きしていることを知った家斉。御台所・茂姫(蓮佛美沙子)との間に生まれた敦之助もその犠牲となり、茂姫は哀しみのあまりおかしくなり、家斉のことを敦之助だと思うように。妻と子を守れなかった後悔は家斉を奮い立たせ、「男とて女を守れる世に変えたい」と自らの意思で人痘接種の再開を目指す。かくして治済の操り人形を辞めた家斉は、結果的に多くの人を動かすことになった。

 歴代将軍と比べても、家斉にはとても人の上に立つ人間の資質が備わっているとは言い難い。吉宗のようなカリスマ性もなければ、徳川家光(堀田真由)のような強い覚悟、徳川綱吉(仲里依紗)のような思慮深さも持ち合わせておらず、どこか頼りなく見える。ただ一つあるとすれば、それは思いやりのある心だ。目の前に苦しんでいる人がいたら、心を痛めることができる。たったそれだけ、しかし、それだけで人の心を動かすには十分だった。

 家斉がまずやったのは、浅草の天文方に翻訳局を設けること。黒木をそこに役人として任命し、蘭書翻訳という名目で幕府の財力を借りながら自由に人痘に代わる熊痘接種の準備を進める状況を作り出した。しかし、家斉が政に関わっていることを治済に知られてはいけない。そこで力を貸してくれたのが、老中たちやお中臈の松方(前田公輝)だ。

 老中たちは家斉に代わり、翻訳局新設を治済に促してくれた。松方も治済に仕える美男をこっそりと集め、政から目を逸らさせる。これまでとは立場を変えた理由を、「男の人生とは左様なものかと諦めていましたが、上様のお言葉に不覚にも心を打たれ」と語る松方。青沼たちのことを嫌っていたのは、田沼(松下奈緒)に人として扱ってもらっていた彼らを羨ましく思うが故だったのだろう。治済は表面上は恭しく振舞っているが、家臣たちに心を配ったことは一度もない。ここにきて、その人徳のなさが露呈した。

 そもそも治済が大奥でのさばっていられるのは、将軍の母であるという理由だけ。その将軍である家斉が動けば、皆がついていくことを妻の茂姫は分かっていたのではないだろうか。だからこそ、家斉が人痘接種を再開させてはどうかと言い出した際に強く背中を押したのだろう。家斉と黒木たちは見事に治済を欺き、熊痘接種を成功させた。

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